メニュー

中国全人代が開幕、GDP目標見送り 景気支援へ支出拡大

中国の李克強首相
5月22日、中国の李克強首相は開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で行った政治活動報告で、2020年の国内総生産(GDP)目標に言及せず、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受ける経済を支援するため、政府支出を拡大する方針を表明した。(2020年 ロイター/Carlos Garcia Rawlins)

[北京 22日 ロイター] – 中国の李克強首相は22日開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で行った政治活動報告で、2020年の国内総生産(GDP)目標に言及せず、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受ける経済を支援するため、政府支出を拡大する方針を表明した。

中国がGDP目標を設定しないのは、目標の公表を開始した2002年(訂正)以降で初めて。

新型コロナの感染拡大を受けた経済活動の停止で、中国GDPは第1・四半期に6.8%落ち込み、数十年ぶりのマイナス成長を記録した。

李首相は全人代の冒頭で、「主に世界の感染状況や経済・通商状況を巡る強い不透明感や、中国の発展が予測不可能な要因に直面していることから、今年は具体的な経済成長率目標を設定していない」と述べた。

国内消費、投資、輸出が減少しており、雇用への圧力が大幅に強まっていると指摘。金融リスクも高まっていると警告した。

2020年の都市部の雇用創出目標は900万超に設定。これは、少なくとも1100万とした昨年を下回り、2013年以来の低水準となる。

失業が社会の安定を脅かすとの懸念が高まる中、中国の指導部は全人代を前に、景気刺激策を強化する方針を示していた。

2020年の財政赤字見通しは対GDP比で少なくとも3.6%とし、昨年の2.8%から引き上げた。地方政府の特別債発行枠は3兆7500億元(5270億ドル)とし、2兆1500億元から拡大。今年最初となる特別国債も1兆元発行すると明らかにした。

李首相は、2020年の財政赤字拡大や特別国債発行を通じた調達資金2兆元を地方政府に振り向ける方針を示した。

アナリストによると、 地方政府の特別債は主にインフラプロジェクトの資金調達に使われるが、特別国債は新型コロナで打撃を受けた企業や地域への支援のほか、消費喚起や中小銀行の資本構造強化を目的とした補助金などに活用できるという。

ロイターが計算したところ、政府活動報告で打ち出された財政刺激策の規模はGDPの約4.1%に相当する。

キャピタル・エコノミクスの中国担当シニアエコノミスト、ジュリアン・エバンズ・プリチャード氏は「予算案は今年の財政刺激策が、世界的金融危機後の刺激策と少なくとも同規模であることを示している」と指摘した。

一方、華宝信託(上海)のエコノミスト、ニエ・ウェン氏は、李首相の政治活動報告について「通常と大きく異なる点」はなかったと指摘。「一部の市場参加者が予想してきたような大規模な景気刺激策は実施されないとの見方を裏付けている」と語った。

同氏は今年のGDP伸び率が2─3%程度と前年の6.1%から大幅に鈍化すると予想。「都市部で900万の雇用を創出するためには今年の成長率は3%程度に達する必要がある」と述べた。

また、オックスフォード・エコノミクス(香港)のルイス・クイジス氏は、中国は過剰債務や金融状況の不安定化を懸念しているものの、李首相の「大規模な財政赤字目標は、厳しい外部環境にもかかわらず国内経済への大規模な政策支援が続くことを示している」と述べた。

李首相は活動報告で、財政政策をより積極的なものにし、金融政策の柔軟性を高めると表明。今年はマネーサプライM2と社会融資総量のの伸びが大幅に加速すると述べた。

また企業の税・手数料負担は今年2兆5000億元軽減されるとした。

中小企業はローンと金利の支払いを2021年3月までさらに9カ月間延期することが可能だとし、大手商業銀行の中小企業向け融資は40%超増加する見込みだとも述べた。

首相はまた、中国人民銀行(中央銀行)が貸出基準金利を引き下げると述べた。