ターゲット化するウォルマート、ウォルマート化するターゲット、その理由とは
値下げと品揃え拡充で衝動買いを誘う
他方、迎え撃つターゲットでは、最高成長責任者のクリスティーナ・ヘニントン氏がアナリスト向け発表会で、ウォルマートのような「毎日低価格」路線を打ち出すと明言した。ヘニントン氏は、「毎日低価格、魅力的なプロモーションとお買い得イベントの組み合わせで、ホリデーシーズンに消費者に選ばれる店になる」と宣言した。
陳列アレンジの手法や品揃えも工夫し、値下げとの相乗効果でより多くの衝動買いを誘う戦術だと見られる。
このようにウォルマートもターゲットも、「低価格」がこの先の売上成長に不可欠であることを認識しており、従来の客層を超えた集客のために、自社と競合とのアイデンティティの境界をぼやかす作戦に出たのだ。
米消費者100万人以上に関する独自のデータを持つ市場調査会社ニューメレーター(Numerator)によれば、典型的なウォルマートの買い物客は少なくとも週に1度 、年間では約63回も来店するのに対し、ターゲットの典型的な買い物客は、2~3週間に1度、年に約23回の来店をする。
より多く来店してもらえるウォルマートは、それだけ有利な立場にあるため、ターゲット側は低価格戦術で来店回数を増やしてもらえるかが、2024年の競争のカギとなろう。その点において、最初からディスカウント店として認知されているウォルマートが若干有利になるかも知れない。
投資家目線から見れば、ウォルマートやターゲットにおける価格競争の激化は株価および時価総額の低下につながり得る。だが、米経済がデフレ環境へ移行すると予想される中、買い物客をつなぎとめることは最重要課題であり、消費者の支持を勝ち取った企業が生き残る確率は高いだろう。
ウォルマートもターゲットも、11月に行われた7~9月期の決算発表で2024年に向け慎重な売上予測を示している。消費の低迷やデフレがささやかれる新しい年に、お互いの成功の模倣が奏功するのか、注目される。