ウォルマート、ベストバイのCEOは何を語ったか!?CES2021総括

松岡由希子(フリーランスライター)
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2021年1月、世界最大の民生機器テクノロジー分野の国際見本市「CES」が初めてオンラインで開催された。本稿では、1月11~14日(日本時間)に開催された「CES2021」と、同時期に開催された小売業界で世界最大級のカンファレンス「NRFリテールズビッグショー(NRF Retail’s Big Show:以下、NRF)2021」の見どころを振り返っていく。

初のオンライン開催
ダグ・マクミロン氏が登壇

 毎年1月に米ラスベガスで開催される世界最大級のデジタル見本市のCESがオンラインで開催された。

 CES2021の出展企業数は1943社、参加者は世界167カ国8万人超と、例年の半数以下にとどまった。CESがオンラインで開催されるのは歴史で初めてのことで、マイクロソフト(Microsoft)が構築を手がけた専用オンラインプラットフォームには、動画の視聴や翻訳機能、オンラインコミュニケーションツールなど、優れたユーザビリティが実装されていた。

CES2021では各企業の展示、基調講演などがすべてオンラインで実施された。画面右はベストバイCEOのコリー・バリー氏
CES2021では各企業の展示、基調講演などがすべてオンラインで実施された。画面右はベストバイCEOのコリー・バリー氏

 米国流通に詳しい三井物産戦略研究所の高島勝秀氏は、CES2021での象徴的な出来事として「小売業界で技術革新をけん引してきたウォルマート(Walmart)が初めて出展し、ダグ・マクミロンCEOが登壇したこと」を挙げる。

 マクミロン氏は、米国小売最大手のトップとして、従業員の安全と健康を最優先にしながら、サプライチェーンを継続的に機能させ、着実に戦略を遂行してきたコロナ禍での経験を率直に語り、感染リスクにさらされながら懸命に勤務し続けた従業員の仕事ぶりを大いに称えた。

 ウォルマートでは、コロナ禍でのEC需要の急増に対応するとともに、オンラインで注文した商品を店舗の駐車場で受け取る「カーブサイドピックアップ」など、非接触型サービスを拡充。2020年9月には、ネットスーパーの当日配送サービスなどが無制限で利用できる有料会員制プログラム「ウォルマートプラス(Walmart+)」を開設した。

 マクミロン氏は、コロナ禍での消費者の購買行動の変化に対応した一連の取り組みについて「他社の模倣ではなく、ウォルマートの資産や組織力に裏づけられたものだ」と語り、全米に広がる店舗網を生かしたオムニチャネル化に自信をのぞかせた。

 AIやビッグデータ、ロボット工学といった技術は、ウォルマートの事業運営において重要な要素のひとつとなっている。マクミロン氏は、技術へのアプローチとして「単一の技術が世界を変えるのではなく、複数の技術をどのように組み合わせるかが重要だ」と強調。また、組織のあり方について「チームとして仕事に取り組むことがイノベーションの創出を促す」としたうえで、「多様なチームが勝ち、インクルーシブな環境が成功する」と説いた。

 また、19年6月に米家電量販店最大手のベストバイ(BestBuy)のCEOに女性で初めて就任したコリー・バリー氏も登壇し、注目を集めた。

 ベストバイでは、コロナ禍でECの需要が急増し、20年度第3四半期のEC売上は対前年同期比173.7%増となった。バリー氏は「店舗とECとのハイブリッド化が2~3倍のペースですすんだ」としたうえで、「ベストバイでは、ECの普及を見越し、4年かけてサプライチェーンの整備に投資してきた。この5~10年に物流インフラの整備やデジタル技術への投資を適切に実行したか否かが、コロナ禍で明暗を分けたのではないか」と指摘する。

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