ここにきて連続2桁成長の米ターゲット アップルの次にZ 世代から支持される理由とは

平山 幸江 (在米リテールストラテジスト)
Pocket

アメリカ小売大

米ディスカウントストア(DS)大手のターゲット(Target)は、コロナ禍でも売上高が2ケタ成長を続けるなど絶好調だった。2021年度の売上高はついに1000億ドルを超え、足元の業績を見ても波に乗っている。同社の好調要因と経営戦略について分析する。

売上・利益の成長率はウォルマートを上回る

図表❶売上高、営業利益率の推移 まずターゲットの業績数値を、小売最大手のウォルマート(Walmart)の米国事業と比較しながら見てみよう(図表❶)。

 ウォルマート米国事業の売上高を1としたときのターゲットの売上高の比率は、2017年度は0.23:1だったのが、21年度は0.27:1に縮まっている。また、ターゲットの売上高対前年成長率は、19年度までは毎年3.5~3.7%だったが、20年度は19.8%、21年度は13.3%とここ数年急伸している。一方のウォルマートもコロナ特需の恩恵を同じく受けたとはいえ、米国事業の売上高成長率は20年度が8.5%、21年度が6.3%と、ターゲットに比べると見劣りする。

 さらに営業利益率を比較すると、コロナ前はターゲットが6%弱、ウォルマートが5%強で推移していたが、その後はウォルマートがほぼ同水準で推移しているのに対し、ターゲットは20年度が7.0%、21年度が8.4%と利益率も拡大しているのだ。

 図表❷はターゲットの販売チャネル別売上高構成比と増減率で、17年度にはデジタル売上高比率は5.5%だったのが21年度には18.9%に拡大。同売上高が20年度に前年の約2.5倍に膨らんだのが大きかったが、昨年度もさらに2割増加している。

 「stores-as-hubs(=ECのハブとしての店舗)」という戦略を掲げるターゲットだが、20年度以降、店舗でのフルフィルメント率(ネットで注文した商品を店舗から出荷する割合)は96%以上になる。そもそもこのようなデータを公開する時点で、同社の店舗フルフィルメントセンター(FC)化の本気度がうかがいしれる。

 オムニチャネル戦略という言葉が使われるようになって早10年、ウォルマートは配送の自動化や自動マイクロFC導入など最先端のデジタルトランスフォーメーション(DX)に積極的な投資をし続け、同領域での先駆者的イメージが広がっている。一方で店舗という資産をベースにするターゲットのオムニチャネル戦略へも、好意的な評価がなされるようになってきた。

 なぜターゲットはここまでの成功を収めているのか。筆者は大きく3つの「成功の秘訣」があると考えている。順にみていこう。

成功の秘訣❶ 店舗投資

小型店を積極出店しECの新たなハブに

 ターゲットは12年に「シティターゲット(City Target)」という名称で

続きを読むには…

この記事はDCSオンライン+会員限定です。
会員登録後、DCSオンライン+を契約いただくと読むことができます。

DCSオンライン+会員の方はログインしてから閲覧ください。

1 2

記事執筆者

平山 幸江 / 在米リテールストラテジスト

慶應義塾大学、ニューヨーク州立ファッション工科大学卒業。西武百貨店勤務後1993年より渡米。伊藤忠プロミネントUSA(Jクルージャパン)、フェリシモニューヨーク、イオンUSAリサーチ&アナリシスディレクターを経て2010年より独立。日系企業の米国小売事業コンサルテーションおよび米国小売業最新トレンドと近未来の小売業をテーマに、ダイヤモンド・リテイルメディア、日経MJ他に執筆、講演会多数。

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態