コストコにサムズクラブも! コロナ禍で米ホールセールクラブの会員が増え続ける理由

小野 貴之 (ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長)
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米国では、低価格を訴求する会員制倉庫型店舗業態のホールセールクラブの業績が好調に推移している。ホールセールクラブ企業は衣食住に関する商品を幅広く取り扱う。直近ではそのうち食品や日用品の大容量商品、電子機器、家電製品などの売上高が大きく伸長し、業績の伸びを牽引している。なぜ、ここにきてホールセールクラブがお客に選ばれているのだろうか。
取材協力=高島勝秀(三井物産戦略研究所)

コロナ禍で会員が増加! なぜ?

 米国におけるホールセールクラブの代表格は、コストコ(Costco Wholesale:以下、コストコ)とウォルマート傘下のサムズクラブ(Sam’s Club)である。米国内で560店舗を展開する最大手のコストコは、直近四半期(2021年9~11月)の全店売上高が約345億ドルと対前年同期比14.9%増の伸びを示している。一方、サムズクラブは約600店舗を展開しており、21年8~10月の全店売上高は同19.7%増の約190億ドルとなった。会費収入も、コストコが同9.9%増、サムズクラブが11.3%増と大きく伸びている。

 海外流通の動向に詳しい三井物産戦略研究所の高島勝秀氏は、米ホールセールクラブ大手2社の好調の要因は大きく2つあると指摘する。その要因の1つ目は、米国の消費者心理の変化だという。「従来は会費の支払いに抵抗のあった消費者が、物価上昇の懸念が高まったことにより、初期経費を負担してでも中長期で恩恵を受けたいとの意向が働き、会員制が受け入れられやすくなっている」と高島氏は話す。

 両社の年会費はコストコが60ドル(6900円、1ドル=115円換算)、サムズクラブが45ドル(5175円、同)で、いずれも据え置かれていることから、両社の会費収入の増加は、会員数が増えているためと推定できる。コストコは同期間中、会員数が80万人増えたことと、全会員の91%が更新して継続会員となっていることを公表しており、新規会員の獲得と、既存会員の囲い込みに成功しているのは間違いない。詳細な数値は公表していないものの、サムズクラブもコストコと同様に、新規会員の増加と更新する会員の比率が上昇していることを明かしている。

 では、なぜここにきてホールセールクラブにお客が集まっているのか。高島氏は「(ホールセールクラブの)会費は、消費者が商品を安く買うための“先行投資”と捉えることできる」と話す。実際に、米国労働省が公表した21年11月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は、1982年以来の高水準となる前年同月比6.8%であった。同指数は5月に5%、10月に6%を超えており、インフレによる日用品の価格上昇が続いている。「コロナ禍による雇用情勢などへの懸念も伴って、低価格の魅力が高まり、先行投資が割安に感じられているものと考えられる」(高島氏)。

脚光浴びるホールセールクラブ、他業態への展開も?

 2つ目の要因として挙げられるのが、コロナ禍で発生した物流混乱への適応が奏功したこと、そしてその結果として拡大した需要に応えられたことである。両社は、通常の受入港であるロサンゼルスが混雑していたため、海洋船をチャーターし、テキサスをはじめとした別の港へ迂回するなど、スムーズな商品調達にいち早く着手している。「販売の機会損失を未然に防いだにとどまらず、安価な商品を安定的に供給し続けたことが消費者の満足向上につながったのは間違いないだろう」と高島氏は分析する。

 同氏は続ける。「会員制の小売業は、顧客ロイヤルティを高め、継続して選ばれ続けることで好業績につなげられる有益なビジネスモデル。今後はこうしたモデルが他業態へ展開してく可能性も考えられる」

記事執筆者

小野 貴之 / ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長

静岡県榛原郡吉田町出身。インターネット広告の営業、建設・土木系の業界紙記者などを経て、2016年1月にダイヤモンド・リテイルメディア(旧ダイヤモンド・フリードマン社)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属し、小売企業全般を取材。とくに興味がある分野は、EC、ネットスーパー、M&A、決算分析、ペイメント、SDGsなど。趣味は飲酒とSF小説、カメラ

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