ロイヤルホストがコロナ前よりも売上水準が上がっている複数の理由とは

千葉 哲幸 (フードサービスジャーナリスト)
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ファミリーレストランの「ロイヤルホスト」(222店/2023年6月末時点)では、2022年12月期の売上水準が19年度を上回った。ロイヤルホールディングス(東京都/阿部正孝社長)の22年度決算の決算説明資料によると、「ロイヤルホスト」の月次売上高(既存店換算)は19年度比で10月が117.5%、11月が106.9%、12月が114.2%となっている。客単価は250円もアップしている(実額は非公表)。
コロナ禍にありながら、その好調の要因はどのようなものか、同チェーンを展開するロイヤルフードサービス(東京都)の代表取締役社長、生田直己氏を取材したことから、そのポイントをここでまとめておきたい。ちなみに同社は、ロイヤルホールディングスの外食事業の中核となる事業会社で、グループ会社としてはロイヤルコントラクトサービス(コントラクト事業)、ロイヤル(食品事業)、アールエヌティーホテルズ(ホテル事業)などがある。

ロイヤルフードサービス代表取締役社長の生田直己氏

メニューの強み「洋食」に注力する

 ロイヤルホスト好調の理由は何か。まず挙げられるのが、店舗の立地環境だ。

 「ロイヤルホスト」は1971年に北九州の黒崎に1号店がオープンしてから50年以上の歴史がある。当初はモータリゼーションが発達途上だった時代で、クルマで来店できるように駐車場を数多く抱えた店舗を出店していく。そのような形で約30年が経過したが、人の集まり方が都市や繁華街にシフトするようになり、店舗もロードサイドタイプからビルインタイプに変わっていった。

 ただ、コロナ禍で繁華街や駅前から人が消えたことで、そうしたビルインタイプの都心店舗が大打撃を受けた。一方、コロナ禍にあっても強かったのが、ロードサイドに象徴される「地域のお店」だ。元々、食事を目的に来店するお客が多く、コロナ禍が悪化していった中でもそのような利用目的の来店が増えていった。これまで以上に食事を楽しむ客が増え、客単価も上がっていったのである。

 ファミリーレストラン50年の歴史の中で「ロイヤルホストは少し高いけれど、おいしいお店」というポジションを得るようになったが、コロナ禍での閉塞感が漂う中で、この「おいしい」という部分が「行きたいお店」という目的来店の動機をもたらしたようだ。

 最も特徴的なのは、フードメニューのシグネチャー(特徴、代表)である「オニオングラタンスープ」の出数(注文数)が1.5倍に増えたことだ。「オニオングラタンスープ」とは、新婚旅行中のマリリン・モンローが好み、「ロイヤルホスト」の原点であるフランス料理店「ロイヤル中州本店」に来店したのだが、それを手軽に味わえるようにしたもの。「ロイヤルホスト」の楽しみ方を知っているお客が好んでオーダーするメニューでもある。

「洋食小皿」シリーズの「シーフードクリームオムライス&煮込みハンバーグ」2398円(税込、以下同)+「前菜セット」671円

 強みとする「洋食」に磨きをかけている点にも注目したい。それを象徴するのが、昨年導入した「洋食小皿」シリーズ(例:シーフードクリームオムライス&煮込みハンバーグ、税込2398円)で、ネーミング通りに洋食の楽しみを1つのお膳の中にセットにして、人気を博したことから組み合わせのバラエティを広げている。

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記事執筆者

千葉 哲幸 / フードサービスジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』編集長、商業界『飲食店経営』編集長を歴任するなど、フードサービス業界記者歴ほぼ40年。業界の歴史を語り、最新の動向を探求する。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年発行)。

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