生活必需品なのにコロナで独り負け、飽和時代のコンビニのゆくえ
国内コンビニがめざす新たなフロンティアとは
コンビニ業界が転換期にあるということは、コロナ禍前からすでに顕著になりつつあり、その出退店数の推移をみると、国内市場が飽和に向かいつつあったことがうかがえる(図表③)。
大量に出店しながら、不振店を閉店、移転することで、スクラップ&ビルドを実行しつつ店舗を増やしていくというコンビニの出店戦略は、すでに行き詰っていた。少し前に多発した加盟店とコンビニ本部との争議もこうした市場飽和を背景としており、これまでの成長戦略を転換すべき時に来ていることは、誰の目にも明らかであろう。
飽和しつつある市場においては、新たな成長のためのフロンティアが必要であり、コンビニ業界はすでにその準備をすすめつつある。DX化により、店舗の無人化(もしくは省人化)をめざすというコンビニ各社の取り組みは、店舗損益分岐点の低減が目的でもある。
これは出店可能な商圏規模を極小化することであり、これにより新たに出店可能となる極小商圏が膨大に創出できるため、実現すれば国内にコンビニの新たなフロンティアが生み出されるのである。省人化の実現はコンビニ成長の今後の大きなネックとなる人員確保という課題解決にもつながる。
細分化されたフォーマットへの投資が命運を分ける?
顧客に近づくという意味では、宅配や移動販売車という手法も重要な選択肢であり、これらについてもコンビニ各社の取り組みがさまざま行われている。「時間がない」「足がない」という理由で遠くに買物に行けない消費者に対して、「届ける」「出向く」というサービスは、消費者の支持を得られるに違いない。
しかし、「届ける」「出向く」というオペレーションは物流コストと直結しているため、損益分岐点を押し上げてしまう要因でもある。DXは情報のイノベーションではあるが、モノを運ぶという作業を省人化するところ(ロボティクス、ドローン物流などのイメージ)までは至っておらず、収益貢献するにはまだ相当な時間を要するはずだ。まずはDXによる店舗フォーマットの細分化により、極小商圏を取り込むというのが現実的なのであろう。
損益分岐店を下げたコンビニが開拓する立地は、さまざまなタイプが想定できる。これまでより小さいオフィスビル、工場、病院など人の集まるスペースへの出店居地は飛躍的に増える。中規模クラスの小売店舗などの空きスペースを活用した場所も対象になるだろう。これまで難しかった郊外の団地や住宅地なども視野に入ってくるかもしれない。
いずれも商圏人口が少ないために立地として不適であった場所への出店が可能になれば、コンビニの成長余地は再び拡がる。
コンビニ需要とは、移動制約、時間制約がある人、もしくは制約がある時、そして今すぐ必要があるといった場面に生まれるものだ。単身世帯、共働き世帯、勤務時間中の人、交通弱者の高齢者などのニーズに細分化されたフォーマットで、顧客に近づいていくという手法によって需要を取り込む余地はまだある。
DX化が実現するコスト削減で生み出される原資を、きめ細かいフォーマット開発に投資する企業こそが、市場飽和を超えてシェアアップを実現することになるだろう。
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