無理解の壁・後篇 似て非なるGMSの食品売場と食品スーパー
データでみるGMSとSMの決定的な違い
データも見てみよう。図表2はGMSとSMの1日当たり1店当たり食品売上高(平日・週末)、図表3はGMSとSMの1日当たり1店当たり食品購入客数(平日・週末)である。筆者がビジネススクールでの講義や各種講演会で用いているもので、グラフは複数のGMS・SM企業からヒアリングしたデータの平均値(グラフは概算値で表記)である。大都市と地方で若干の差はあるが、GMS・SMともに各社とも概ね同水準の数値であった。
図表2の1店当たり食品売上高(千円/日/店)を見ると、同じ食品売場といっても売上水準が全く異なり、GMSの食品売上高はSMの約2倍に達する。また、平日・週末の差でみると、SMは平日・週末の差が10数%増し程度だが、GMSの週末販売額は平日の約3割増しであり、GMSは週末に“ガツンと売る”志向の強い業態であることが示される。
そして、図表3の1店当たり食品購買客数(人/日/店)が今回のポイントである。GMSの食品購買客数はSMのそれに対して平日・週末ともに約2倍(1.8倍)に達する。逆に言えば、SMの客数はGMSの食品売場の約半分強に過ぎない。したがって、GMSの食品売場と同様の客数想定の下でSMの販売計画(=生鮮食品の製造計画)を立てると、結果は大量の値下げロス・廃棄ロスがもたらされ、店舗損益を著しく棄損することとなる。SMで店舗利益を確保するためには、限られた客数を前提にした、精度の高い数量管理(=SKUごとのきめ細かな製造計画・追加生産・売切れ御免の割り切り等)に裏付けられた粗利益確保が必須なのだ。
上記が“GMSは集客で売上を稼ぎ、SMはオペレーションで利益を稼ぐ”と表現した理由である。
小売業界においては、資本関係上、SM企業がGMS企業の連結子会社となっている場合が多く、今後も多くの再編があるのであろう。そして、地域に密着したSM企業が残念な事態になりうるかもしれない。
通りすがりの小売アナリストの言説ではあるものの、心あるGMSの経営者や従事者に届くことを祈りながら、そんなことを思う今日この頃である。