閉鎖か、それとも衣替えか……崖っぷち居酒屋チェーンの現在地

棚橋 慶次
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猛威をふるった新型コロナウイルスも最近は落ち着きを見せ、繁華街や観光地の人出がコロナ禍前の水準に回復してきたという報道もある。では、コロナ禍で最も打撃を受けた業態の1つである居酒屋にお客は戻っているのだろうか。そもそも私たちは、コロナ禍のずっと前から居酒屋から足が遠のいていたのではないだろうか。今回は、酒飲みカルチャーの変遷や大手チェーン各社の業績を見ながら、今後の居酒屋チェーンの戦略について考えてみたい。

kanzilyou/iStock

「飲みニケーション」は過去のものに?

 「送別会」「新年会」「歓迎会」と、コロナ禍以前の職場では、イベントがあるたびに居酒屋を求めて街に繰り出していた。そうしたイベントがなくても、理由をこじつけて飲みに行く人も多かったことだろう。コロナ禍により、そうしたカルチャーはすべて過去形になってしまった。

 コロナ禍収束の兆しが見えても、すっかり定着したリモートワークなどの文化はそう簡単に後戻りはしないだろう。たとえオフィスに出社したとしても、「帰りにちょっと1杯」という雰囲気にはならない。家でゆったり過ごす生活に慣れてしまい、夜遅くまで繁華街を徘徊するのが億劫になってしまったのだ。

 日本生命保険が2021年に実施した意識調査によれば、全体の約6割が「飲みニケーション」を「不要」「どちらかといえば不要」と回答し、「必要」「どちらかといえば必要」と答えた約4割を大きく上回った。コロナ禍以前に実施された同調査では、「必要派」が5割以上に達していたものの、2021年に初めて逆転。今や「飲みニケーション支持派」は少数勢力なのだ。

コロナ禍が居酒屋チェーンを直撃

 こうした「酒飲み文化」の変化は当然、居酒屋チェーンの売上に大きく影響している。居酒屋チェーン大手、ワタミ(東京都)の国内外食事業の売上高は、2020年3月期の469億円から2021年3月期171億円と半分以下に激減。翌2022年3月期は151億円とさらに減収となっている。足元では業績は急回復しているものの、コロナ前に水準は遠い。

 ただ、居酒屋チェーンはコロナ禍前からすでに厳しい状況にあった。ワタミグループが絶頂期にあった2013年3月期、国内外食事業の売上高は740億円もあった。つまり、ワタミの国内外食事業は10年足らずで5分の1近くまで縮小してしまったのである。直近の中間決算(2023年3月期)でも宅食事業は国内外食事業の倍以上の売上高を稼いでおり、今やワタミの柱は宅食事業と言っていい。

 コロナ禍前から落ち込んでいた業績がコロナ禍でさらに悪化。コロナ禍が収束しつつあるなかで以前の水準に戻らない、というのが居酒屋チェーンの現状だ。「庄や」などを運営する大庄(東京都)も、飲食事業の売上高はここ5年間で半分以下(2017年8月期:517億円→2022年8月期:199億円)にシュリンクしている。

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