“YAKITORI”を世界共通言語へ! 「鳥貴族」が描く海外戦略成功のシナリオ

構成:油浅 健一
取材:阿波 岳 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

出店国ごとの特性を踏まえ最適な戦略を徹底

 249月に進出した台湾では3店舗を展開しており、現地の畜産・食品業界の最大手「大成集団」との合弁事業を通じて出店を進めている。清宮氏はこの提携について「鶏肉の安定供給と出店機会確保の双方を実現できるため、非常に理想的なかたち」と説明する。

 香港には2412月に進出し1店舗を構える。現地の食品製造・販売大手「四洲集団」とフランチャイズ契約を締結して参入した。その結果、開店初日には鳥貴族全店舗の中で過去最高の売上を記録し、その後も高水準の業績を維持しているという。

 中国本土では4店舗を展開している。上海郊外の商業施設を中心に、郊外へ展開する「ドーナツ出店戦略」を採用。賃料の高い都心部を避ける一方で、全品18元(日本円で約365円)均一とし、名物「貴族焼」は日本の1.5倍サイズで提供するなど、現地の市場環境に徹底的に合わせた店舗づくりを行っている。

鳥貴族ブランドの主要海外市場における戦略比較

 このように、出店国ごとに特性を踏まえた最適な戦略を徹底することで、「すべてが想定をはるかに上回る好調ぶりだ」と清宮氏が語るほどの成果が出ている。すでに同氏も、さらなるスピード感を持って展開を進める必要性を感じており、海外事業は順調な立ち上がりを見せている。

 まだ海外進出は初期フェーズではあるものの、今後の目標達成に向けては、人材育成が重要になってくる。これに関して清宮氏は、「『グローバル幹部研修』のような人材育成プログラムの確立を構想している。具体的には、各国のリーダーを日本に招き、鳥貴族の理念や焼き鳥文化を深く理解してもらう場としたい」と説明する。

 あわせて、サプライチェーンの最適化や現地適応を進めつつ、「鳥貴族品質」と「焼鳥愛」を全店舗で一貫して提供できる実行力が問われる。“仲間や家族”という価値観を世界中で広げていくことで、同社の掲げる「YAKITORIの世界言語化」というビジョンは、より現実味を帯びてくる。

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取材

阿波 岳 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

大学卒業後、社会の荒波にもまれる日々を経験。そこで書籍や会報誌の編集に携わるうちに、メディア事業への興味が芽生え、今に至る。
趣味は喫茶店巡りと散歩。喫茶店での一杯のコーヒーや、街角の散策を生きがいとしている。
これまで全都道府県を制覇するという小さな目標を達成した。何かを極めたり、制覇したりすることには、なぜか人一倍の熱意を注いでいる。
最近の悩みは、ここ数年で増えた体重との戦い。健康の大切さを意識しつつも、喫茶店のコーヒーに合わせたスイーツや、ランチの大盛りがやめられない。今日もまた元気に「大盛で!」と注文しつつ、明日こそ控えめにしようと心に誓っている。

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