“YAKITORI”を世界共通言語へ！　「鳥貴族」が描く海外戦略成功のシナリオ

焼き鳥チェーン「鳥貴族」を運営するエターナルホスピタリティグループ（大阪府／大倉忠司社長：以下、エターナルHG）が、海外事業を一気に加速させる。2025年7月期から27年7月期までの中期経営計画では、「海外事業の立ち上げと実績の積み上げ」を標榜。コロナ禍の低迷から復活を遂げた同社が、その先に見据えるのは“YAKITORIの世界共通言語化”だ。国内市場が縮小する中、満を持して挑む海外への本格進出。その戦略や展望について、海外事業を統括する清宮俊之COOに聞いた。

業績回復で海外進出も前倒しで実現、成長加速の起点に

　「鳥貴族」はなぜ今、海外事業に本腰を入れようとしているのか。清宮氏は「その理由は至ってシンプルだ。世界を見渡せば、市場はたくさん存在する。国内は少子高齢化でマーケットが縮小する中、より大きな市場に自ら打って出る必要があるからだ」と語る。国境を越えることにはリスクも伴うが、国内市場の先細りが避けられない現状を踏まえれば、海外への展開に軸足を移すのは、持続的な成長を見据えた合理的な判断と言えるだろう。

　この海外シフトの動きを下支えしているのが業績のV字回復だ。コロナ禍の21年7月期に155億円まで落ち込んだ売上高は23年7月期に334億円、24年7月期には419億円と急回復。営業利益も21年7月期の46億円の赤字から24年7月期には、32億円の黒字転換を果たした。

　その結果、海外進出を実現し、米国・台湾・香港・韓国への出店を果たした。この一連の動きを通じて、各国における市場のポテンシャル、国や地域ごとの消費動向や事業展開の手応えを把握できたことが、海外事業加速への大きな布石となった。 

目標は海外売上比率25％超　グループ2000店舗体制へ

　エターナルHGは、新たに「Global YAKITORI Family」という長期ビジョンを掲げている。これは、焼鳥という日本の食文化を「YAKITORI」として世界に広げていこうという、大倉忠司社長の悲願でもある。

　同社のビジョンでは、次のように掲げられている。

　〈“焼鳥”を“YAKITORI”に、“YAKITORI”を世界共通の言語に。“焼鳥”を事業の軸として、世界の外食市場に挑戦してまいります──。この強いビジョンのもと、積極的な海外展開を進めています。〉

　「YAKITORI」という言葉を、寿司やラーメンのように世界中で通じる食の共通語にしたい。そのため、単なる商品や業態の輸出にとどまらず、焼鳥という食文化そのものを、グローバルな存在へと昇華させるという構想だ。

　実際に海外展開を本格化するうえで、中心に据えられているのが長期ビジョンにある「Family」という考え方である。単なるチェーン展開ではなく、焼き鳥という食文化を世界中に広めるための“仲間”や“家族”を世界中に増やすイメージだ。そのため、直営、合弁、フランチャイズなど多様な進出モデルを柔軟に使い分けていく方針としている。

　日本で培った「鳥貴族」ブランドをそのまま輸出するのではなく、現地の文化や消費動向に応じて柔軟にローカライズする。その上で、需要が見込めるエリアを戦略的に選定し、多店舗展開を進める。こうした取り組みを通じて、「YAKITORI」の“世界共通語化”を本気で見据えている。

　25年7月現在、海外には14店舗を展開している。今後はこの動きをさらに加速させ、グループ全体で30年までに2000店舗以上の出店を目標とするが、そのうち海外店舗の比率を25％以上に高める方針だ。清宮氏は、「国内の店舗数を海外が上回るような規模感での展開をめざしたい」と展望を語った。

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