スキマバイトサービス「メルカリ ハロ」 後発なのに会員数がタイミーに肉薄の理由

上林 大輝(ダイヤモンド・チェーンストア 編集者)
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事業の垣根を超えた「価値循環」の考え方

 スポットワーク事業については、メルカリ内で以前から構想があったという。コロナ禍以降、週休3日制の普及や副業解禁など、多様な働き方のイメージが社会に浸透。「人の持つ時間やスキルを循環させることで、人の可能性を広げられるのではないかと考える中で、スポットワーク事業とメルカリの領域がうまく合致した」と太田氏は説明する。『あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる』をグループミッションに掲げる同社。「メルカリ ハロ」の課題意識は、同社の価値循環の考え方が軸になっている。
 23年4月にチームを立ち上げ、1年足らずでサービスをローンチ、リリースから3カ月で500万人の登録者を得た「メルカリ ハロ」。ここまで短期間で事業を推し進めた要因は、同社が運営するフリマアプリ「メルカリ」が持つ事業基盤の存在だ。
 同社はまず、「メルカリ」アプリ内に「はたらく」タブを設置し、アプリ内で求人を閲覧できるようにした。単独の「メルカリ ハロ」アプリもリリースしているが、もともと利用している「メルカリ」アプリ内からダイレクトに「メルカリ ハロ」のサービスを利用できる。いずれの場合も「メルカリ」内で利用しているIDとの紐づけが可能なため、「メルカリ」のアカウントがあれば、会員登録や本人確認を省略できる。月間アクティブユーザー数約2300万人を誇る国内最大のフリマアプリから、シームレスに「メルカリ ハロ」にユーザーを誘導することが可能となる。同社のサービスを利用する、圧倒的なユーザー数にリーチできることこそ、同サービスの強みとなっている。

「メルカリ ハロ」アプリ上での操作画面


 利用者が抱く不安や手間をできるだけ解消し、「手軽さ」「簡単さ」を追求することで、利用の際のハードルを大きく下げることは、「メルカリ ハロ」事業においても共通しているという。太田氏は「スポットワーク自体の知名度は高くなっているものの、実際に利用したことがある人はまだ多くない。利用の一連の流れもわからない人が多い中で、既存の『メルカリ』を入口に広い接点を持てることは、大きな強みだと感じている」と同事業の手ごたえを語る。
 また、「メルカリ」の利用者層は幅広く多様だ。利用者の属性が幅広い点は、人手を欲する企業側にとってもメリットになる。若年層の利用者が多いイメージのあるスポットワーク事業だが、「メルカリ ハロ」の登録者の年齢別構成比は40代以上の割合が約4割を占めている。
 さらに、同社の調査によると、実際に「メルカリ ハロ」を通じて勤務した利用者の54%が、はじめてスポットワークを利用した「スポットワーク初心者」だったという。「ハードルを下げたことで、スポットワークの領域全体にとって新しい属性の人に利用してもらえており、リピーターも増えてきている。社会に根付いていく感覚がある」と話し、競合に対する同社の利点と、同事業の社会的意義を感じているという。
 このことが、企業が求人を掲載するメリットにもなっている。

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