ユニクロ柳井正会長が「世界は可能性に満ちている」と語る真意

北沢 みさ (MK Commerce&Communication代表)
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小売業の役割は、お客様の生活に合わせて変化していくこと

 小売業には、お客様の生活、そしてその生活が変化する方向に合わせて、商品を供給する役割があります。お客様がサステナビリティに向かうのであれば、事業そのものも同じ方向に向かっていかないといけないのではないでしょうか。

 これまで小売業は、どういう店を作るかとか、経営の効率ばかりを優先してきた結果、売っている商品はどこでも同じという状況に陥っているように思います。これからは少子高齢化で消費が減っていきます。インフレで報酬が上がらないまま消費が減っていくとしたら、その中で少々シェアを上げても根本的な解決になりません。つまり、ビジネス自体を変えていかなければいけないところに来ているのです。

柳井氏は「小売業の役割は、お客様の生活に合わせて変化していくこと」と説く

日本のアパレルは“借り物文化”

 アパレル業界は、お客様のライフスタイルの変化を、表面的なデザインや素材などを変えて形だけで追いかけています。その時々の表面的なニーズの変化、流行に合わせているだけのブランドは、5年後、10年後に残っているかどうかわかりません。ましてや、そんなブランドを作っては潰すことを繰り返し、それでお客様のニーズに応えているような気になっているのでは、日本のアパレルには将来がありません。

 そもそも、日本のアパレルは借り物文化です。「洋服」と言う通り、服は西洋から来たものです。その借り物の価値観に則って、いまだにデザインや素材といった表面的なところだけを真似て作っている企業が多いのではないかと思います。メーカーから仕入れたり、工場でプライベートブランドを作るだけのところです。

 ユニクロもかつてはそのような方法で商品を作っていた時期がありました。しかし、ある程度の規模になると、そうしたやり方だけではいけないと気づく瞬間、転換期が来るのです。いま、ユニクロは限られた工場と、長年に渡って一緒にものづくりをしています。だからこそ、サステナブルな商品を作ることができますし、それがどんなに大変なことかも知っています。

 本当に工場や素材メーカーと一緒になってものづくりに取り組まない限り、これからの世の中に求められているような、サステナビリティに配慮した商品を作り出すことはできません。

柳井氏は「日本のアパレルは“借り物文化”だ」と指摘する

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記事執筆者

北沢 みさ / MK Commerce&Communication代表

東京都出身、日本橋在住。早稲田大学第一文学部卒業。
メーカーのマーケティング担当、TV局のプロデューサーの経験を経て、
1999年大手SPA企業に入社しマーケティング・PRを12年、EC・WEBマーケティングを8年担当し、ブランドの急成長に寄与。
2018年に独立後は、30年に渡る実務経験を活かし、小売・アパレル業界を中心に複数企業のアドバイザーとして、マーケティングおよびEC業務を支援中。

 

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