服に愛着を生む リ・ユニクロスタジオのリペア&リメイクサービスとは
ユニクロの服は愛着をもって長く着られている
もっとも予想外だったのは、お客がユニクロの服を長く着ていることだ。
「8年、10年と着て、穴が開いたり破れたりしているのに、それでもまだ着たいと思って、『RE.UNIQLO STUDIO』に持ってくるお客様がたくさんいらっしゃいました。10年以上前に2990円で買われたジーンズを持って来られたお客様は、全部直したら1万円近くかかってしまうとお伝えしたのですが、『それでも気に入っているから直してほしい』と言っていただけました。ユニクロの服を大事に着ていただいているお客様がこんなにいらっしゃったんだとわかり、感動しました」(花田氏)
お客の自社商品への愛着を目の当たりにするのは、ブランド側にとって、新しい服を買ってもらう以上に嬉しいことなのではないだろうか。
修理するリペアだけでなく、刺繍などのリメイクも人気だ。
「刺繍サービスは、100種類くらいの図案と文字の中から選んでいただくのですが、小学生のお子様からご年配の方まで、楽しんでいただいています。たとえば、3人くらいで来て、皆でお揃いの刺繍をしたり、同じ商品にそれぞれ好きな刺繍を入れたり。毎月、自分の好きな言葉や登った山の名前を入れられる方もいらっしゃいます。服で共通の思い出を作れると、また長く大切に着ていただけるのではないかと思います」(花田氏)
「難しかったのは、やはり、オーダーメイド的なものをどうやってパッケージ化して広げていくかということです。まず、専門家の方に、一番簡単で誰でもできるような方法を作っていただいて、それを自分で実際やってみて、本当に誰にでもできるのか、どのくらいの手間がかかるのか、一つ一つの作業に何分かかるのか、自分たちで全て検証しました」(花田氏)
そして検証後、店舗に行ってスタッフたちに、自らが講師となってトレーニングする。トレーニングでは、リペアやリメイクの作業に入る前に、まず、これは何のために取り組んでいるのかということを理解してもらうことから始める。それを理解してもらうと、あとは実際のお客とのコミュニケーションの中で、スタッフたちがどんどん自走し始めて、新しいメニューやサービスを考えだしていくのだという。
今後の展開の予定は
日本国内ではまだ世田谷千歳台店、前橋南インター店、天神店の3店舗にしかなかった「RE.UNIQLO STUDIO」だが、今年9月には新たに6店舗での展開が決まり、9店舗に拡大する。
9月4日に 「銀座店」(東京都中央区)、「UNIQLO TOKYO」(東京都中央区)、9月8日に「東急百貨店さっぽろ店」 (北海道札幌市 ※新店)、9月15日に「 あべのキューズモール店」(大阪府大阪市)、そして9月19日には「浅草店」(東京都台東区) 、「御徒町店」(東京都台東区)と、次々と「RE.UNIQLO STUDIO」が増えていく予定だ。
現在800店舗を超える日本国内のユニクロ店舗のうち、わずか1%強ではあるが、海外からの観光客が急増している都心の大型店も含まれ、その波及効果はきっと大きなものになるだろう。
「いまのところ、『RE.UNIQLO STUDIO』はあくまで、店頭で提供するサービスの一環でしかありませんが、今後の目標は、この活動を事業化し、さらに拡大していくことです。難しいことも多いですが、社内でもいろんな部署の方が注目し、自発的にこの事業に関わろうとしてくれているので、とても心強いです」(花田氏)
小売店の従業員は通常、マニュアル化された効率的なオペレーションで動いているため、イレギュラーな作業が発生することを嫌がるものだ。ユニクロでもそれは同様と思っていたが、花田氏の話を聞いていると、実際の現場の雰囲気はまったく違うことに気づく。自ブランドの製品への愛着を育む活動は、何よりも店舗スタッフたちを動かす原動力になるのだと実感した。
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