アスリートと取り組む次世代育成 #3 車いすテニス・国枝慎吾氏と作る未来

北沢 みさ (MK Commerce&Communication代表)
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国枝選手の引退会見で、柳井社長が語ったこと

引退会見での柳井正社長と国枝慎吾選手

 2023年2月7日、国枝選手は引退会見を行った。場所は東京・有明にあるユニクロ本社だ。会見に同席した柳井正社長のスピーチを聞くと、いかに国枝氏を高く評価しているかがわかる。

 柳井正社長は冒頭に、「新しい国枝慎吾の誕生という意味で、今日はめでたい日であります」とスピーチを始めた。そして「車いすテニスという新しいスポーツのジャンルを確立したことは、新しい産業を作ったことと同じ」「プロスポーツ選手よりも、経営者としての才能を持っていると思う」「人生をかけて、一人の人間として尊敬できる」と国枝氏を絶賛した。スピーチの最後には、国枝選手に向かって「今までは助走。過去のことは全部忘れてください。今日がスタート。一緒に日本を、世界の中の日本をより良く変えていきましょう」と呼びかけたのだ。

 国枝選手の目標設定の高さや課題の見出し方、全身全霊でテニスに向き合う姿を見て、柳井正社長は自身のビジネスへの向き合い方と近いものを感じていたのかもしれない。超一流の経営者の目には、国枝選手のポテンシャルは、むしろテニスだけではもったいない、と映っているのであろう。

 引退記者会見の翌日、ユニクロは国枝選手の長年の選手生活を労う15段(1ページ全面)の新聞広告を出した。

 「11歳の国枝慎吾くんへ」から始まるその広告文は、9歳の時にせき髄の病気で両足に障がいが残り、大好きだった野球ができなくなった国枝少年に、車いすテニスを始めてくれてありがとう、という、胸を打つメッセージだ。不安そうな表情を浮かべる11歳の国枝少年と、世界の頂点に立ち、喜びを爆発させる26年後の姿。国枝選手の軌跡は、未来への希望を象徴している。

2023年2月7日のユニクロ新聞広告

 次回、「第5回 なぜ、難民問題にここまで真剣に取り組むのか?」は、7月7日掲載。ユニクロが2001年から取り組む難民支援について、現在ユニクロとグローバルパートナーシップを結ぶUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)を取材した。

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記事執筆者

北沢 みさ / MK Commerce&Communication代表

東京都出身、日本橋在住。早稲田大学第一文学部卒業。
メーカーのマーケティング担当、TV局のプロデューサーの経験を経て、
1999年大手SPA企業に入社しマーケティング・PRを12年、EC・WEBマーケティングを8年担当し、ブランドの急成長に寄与。
2018年に独立後は、30年に渡る実務経験を活かし、小売・アパレル業界を中心に複数企業のアドバイザーとして、マーケティングおよびEC業務を支援中。

 

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