瀬戸内オリーブ基金への支援 #1 社内に育ったサステナビリティの樹
一人ひとりの意識の広がり
参加した従業員の中には、その後も豊島の住民と交流を続けたり、自分の家族を連れて行くようになった人もいる。自分の住んでいる地域で、別の形でボランティア活動に参加するようになる人も増えたという。参加した店舗スタッフのコメントをいくつか紹介する。
「最初はレジ前に設置してあるオリーブ募金について、社員としてもっと知らないといけない、という思いで参加しました。その後、豊島の事を知っていくうちに、大好きになり、みんなにもっと豊島の事や会社の取り組みを知ってほしくて、同僚を大勢連れていくようになりました」(ユニクロルクイアーレ店店長・陳敦輝氏、以下陳氏)
「2015年に初めて参加した時は、豊島はとても豊かな島だと感じました。しかし、実際に産廃現場を訪れてみると、多数の産廃、汚水があり、想像を絶する状況に言葉を失いました。一度参加して終わりではなく、またボランティアに参加して理解を深め、その体験を店舗に持ち帰り、スタッフや地域のお客様に繋ぐ必要があると感じました」(ユニクロアトレ大森店店長・益川清香氏)
「最初のころ、国立公園は森や雑草やごみだらけでした。実際の現場を見て衝撃を受けました。回数を重ねるごとに、自分たちで森の環境を整備し、海沿いで靴を脱いで水遊びできるまでになりました。この環境の変化にはすごく感動しました」(陳氏)
「ボランティアに参加してからは、商品のビニール・梱包材が多いということが、今まで以上に気になるようになりました。こうしたらごみを回収して利用できるという会話や、感じたこと、学んだことを、自分ごととして自分の言葉で伝えることで、他の取り組みに対しても興味、理解をしようとしてくれるスタッフが増えたと感じます」(益川氏)
現場・現物・現実
今日のユニクロのサステナビリティ活動は、瀬戸内オリーブ基金から始まったと言っても過言ではない。今ではユニクロのサステナビリティパートナーは、大規模でグローバルな団体も多い中で、瀬戸内オリーブ基金は、規模は小さいながら22年間継続し、最も社員に根付いた活動だ。
「私たちにとって瀬戸内オリーブ基金の活動が特別なのは、やはり現場があって、現実を見て、そこから一緒に課題解決する、ということだからです。現場・現物・現実です」(シェルバ氏)
取材中に、この「現場・現物・現実」という言葉を何度も聞いた。「現場・現物・現実」とは、机上の空論でなく、実際に現場で現物を見て、現実を認識したうえで問題解決しようという考え方だ。ファーストリテイリンググループでも最も重要視されている考え方の一つで、企業理念にも「現場・現物・現実に基づき、リアルなビジネス活動を行います」という行動規範が掲げられている。この同じ価値観が、社員の一人ひとりに染みわたっていることを実感した。
次回「第3回 瀬戸内オリーブ基金への支援 ② 建築家・安藤忠雄氏と柳井正社長の22年に渡る交流」では、世界的な建築家・安藤忠雄氏に取材し、安藤氏から見たユニクロ、柳井正社長について語っていただく。
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