瀬戸内オリーブ基金への支援 #1 社内に育ったサステナビリティの樹
募金箱設置からボランティア活動へ
全国展開しているユニクロ店舗でできることとして、はじめに取り組んだのは、募金と寄付の活動だ。ユニクロの店舗のレジカウンターに募金箱を置き、お客から寄付金を集める。そして集まった額と同額の寄付を会社がプラスし、2倍の金額を寄付する。いわゆる「マッチング寄付」という方法で、欧米ではポピュラーだったが、2001年当時の日本では新しい方法だった。
しかし、店頭で集められた募金が実際にどのように活用されているのか、従業員たちは知らなかった。そこで、2003年より、従業員が自ら豊島へ行き、産廃の不法投棄の現場を見て、現地の住民の方に話を聞き、島の自然を回復するために、オリーブの樹を植樹するという、ボランティアプログラムを開始した。
従業員を巻き込む道のり
「開始当初は、店舗や本部の従業員に呼びかけても、数人しか集まりませんでした。関心が低いばかりか、店舗の売上につながらないことをしたくない、こんなことをしても何になるのか、といった声もありました」(シェルバ氏)
しかし、一度参加してくれれば活動の意義は伝わるはず。シェルバ氏は、そう信じて社内営業をして回った。特に、店舗のスタッフたちに影響力のある営業部のリーダー陣に個別に声をかけ、参加してもらう機会を作った。社内で報告会や座談会も開催した。そして、何か活動をしたら社内報に掲載する。それを繰り返した。実際、一度参加した人はその後、何回も参加したり、自分の周りの人たちにも参加を促すようになり、次第に参加者は増えていった。
「ボランティア活動で一番難しいのは、やはり、社員を巻き込むこと。決してすぐに成果が出るわけではないので、とにかく続けるしかありません。でも、継続は力なりで、いずれその積み重ねが価値に変換される時がきます」(シェルバ氏)
その後、徐々に参加者が増え、2004年には社内で「ユニクロボランティアクラブ」という組織ができ、豊島への移動費用の8割を会社が負担するようになった。
今では、豊島のオリーブ植樹ボランティアは毎年6回定期開催され、募集をかけると定員の30名がすぐに埋まるほどに定着している。従業員の家族やお客も、参加できるようになった。コロナ禍の間は休止していたが、3年ぶりに活動が再開された2023年2月には、環境問題に関心の高いことで知られるタレントの井上咲楽さんも参加し、その様子はテレビのニュース番組でも特集された。
体験することが最大の教育
この豊島のオリーブ植樹活動は、特に従業員の環境教育の場として最適だった、とシェルバ氏は語る。
「いま日本中どこへでも、新幹線や飛行機で簡単に行くことができると思いますが、瀬戸内海の豊島へは、高松港から船で行くしかありません。島には大きな宿泊施設もなく、私たちはいつも住民の方のご自宅や廃校になった小学校の校舎に泊まらせていただいています。食事も、島の方たちと校庭でバーベキューをするのが恒例です。住民の皆様の過酷な闘いの歴史を聞き、不法投棄の生々しい傷跡の残る現場を見て、そういった旅程のすべてが参加した人にとって忘れられない体験となり、本当にこの美しい島を取り戻すことを自分ごととして考えられるようになります。ただ会社がお金を出して寄付するだけ、というのとは、全く違うと思っています」(シェルバ氏)
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