マーケティング活動とは別物「マーケティング・マネジメント」で激変時代を乗り切る!
「激変時代の小売マーケティング」というテーマで連載をするにあたり、初回は私の課題意識と、変動期を迎える中で重要だと感じている「マーケティング・マネジメント」についてお話ししたい。
まず、「マーケティング・マネジメントとは何か」だが、「マーケティング活動を行う」ということと、「マーケティング・マネジメントを行う」というのは別のことである。単純に言えば、顧客調査を行い、その結果に基づいてプロモーション活動を行っていれば、「マーケティングを行っている」といえる。
一方、マーケティング・マネジメントとは、それらの活動をPDCAで運用するための仕組みや管理・組織体制である。会社としての顧客理解に基づく戦略に従って店・売場までの一貫性が実現できるようなプロセスがあり、適切に運営・管理ができているかということである。
長年続いたデフレのパラダイムがコロナや世界情勢の影響で断ち切られ、転換期に突入しインフレへと変わった。転換期に、顧客である消費者の変化を把握しそれを施策に結び付けなければならないが、刻々と変化する中で軌道修正をするためには、PDCAが必要である。マーケティング・マネジメントはそのためにある。
欧米ではこのマーケティング・マネジメントが「教科書化」され、さまざまな企業で展開されている。筆者はP&GでECR(消費者に対する効率的対応)推進のプロジェクトメンバーとなったことがきっかけで、それを行っている欧米の小売業やその教科書を作成した人たちと仕事で関わるなかで多くの知見を得た。国内でも、実務や小売の業界団体での業務改革プロジェクト、あるいはコンサル会社勤務を通じて多くの小売業の課題と向き合う機会を得た。その後、実際に英国テスコの日本法人のマーケティング部門で働くことになり、実務として携わった。この経験をもとに、激変時代の中でマーケティング・マネジメントがなぜ必要か、実現のポイントについてこの連載の中で論じていきたい。