正しい判断力と鋭い断行力をさらに養う3つの論点

青木 英彦 (東京理科大学大学院教授)
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経営力を再考する

 本連載もいよいよ最終回を迎えることとなった。連載前半では、世界で起こった流通革新の本質を見ることで、今後の流通業者が進むべき方向性を確認した。後半では、組織の意思決定精度を高める「KT法」を解説した。

 この2つのトピックスを連続して解説したのは、小売業の経営力、すなわち、正しい判断力と鋭い断行力を養うことが目的であった。世界各国で実現した流通革新の本質は、供給(メーカーの生産)と需要(小売業による販売)の調整方法を、「小売業が販売価格を上下させることによる需要量の調整」から、「メーカーが生産数量を増減させることによる供給量の調整」へと変動させたことであった。

 なぜ、世界各国でこのような革新が起こったのに、日本では実現できていないのか。組織が正しく意思決定できていないのではないか──との思いから、世界標準の意思決定法をあわせて解説した次第である。

 ただこのほかにも、小売業にとって重要で、取り上げるべき経営上の論点はいくつか残されている。経営者が正しい判断力と鋭い断行力を養ううえで参考になりそうな論点に絞り、整理してみたい。

経営論点❶インプットKPIとアウトプットKPI

 第1が、KPI(重要業績評価指標)に関わる論点である。KPIを定め、組織や個人のパフォーマンスを監視しながら、適切な制御を加えていく、という手法は、経営管理では一般的な手法である。しかし、KPIには、行動そのものの度合いを表すKPI(インプットKPI)と、その行動の結果としての成果を示すKPI(アウトプットKPI)の2種類あることは見落とされがちだ。

 たとえば、

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記事執筆者

青木 英彦 / 東京理科大学大学院 教授

東京理科大学大学院 経営学研究科 技術経営専攻(MOT)教授。

1989年神戸大学経営学部を卒業し、野村総合研究所に勤務。野村證券インターナショナル(米国ニューヨーク市)、ゴールドマン・サックス証券、メリルリンチ日本証券、野村證券にて小売・EC担当証券アナリスト業務に従事。2020年9月より現職。1994年米国Duke大学Fuqua School of BusinessにてMBA取得。2018年神戸大学大学院経営学研究科後期課程修了、博士(経営学)。日本証券アナリスト協会検定会員、CFA協会認定証券アナリスト、日本小売業協会CIO研究会ステアリングコミッティ委員。同流通サプライチェーン政策研究会メンバー。21年12月より加藤産業株式会社社外取締役、23年6月より株式会社ワールド社外取締役

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