ツルハ・クスリのアオキ株主総会の総括と無印のZOZO出店の意外な鉱脈とは

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今夏は酷暑でした。毎年毎年この酷暑が強まり、地球温暖化の危険性を思わずにはいられません。悪天候の程度もキツくなっています。台風シーズンが本格化しますが、皆様身の安全に十二分にご留意ください。今回は、私が気になった話題を2つ取り上げ、さらにこの秋気掛かりなことも少しお話します。

ツルハ・クスリのアオキの株主総会、結局勝者は?

ツルハドラッグ店頭2

 さて、先月はアクティビストとツルハホールディングス(以下、ツルハ)およびクスリのアオキホールディングス(以下、クスリのアオキ)の株主総会における攻防と展望についてお話しさせていただきました。

 8月中に決着したその結果を見ると、両社ともに、創業家取締役の信任率が従来の95%-99%から11-18%ポイント低下し、80%台前半まで低下しました。一方、株主提案の支持率は9%-20%程度にとどまりました。株主提案を行ったオアシスの支持率は概ね20%近辺と言えそうです。

 オアシスの多数派工作は失敗に終わったわけですが、前回お話しした通り、オアシスが失ったものはあまりないと思います。言い方を変えれば、この案件はほぼ「詰んだ」と言えるでしょう。

 この2社の業績も株価バリュエーションもドラッグストアとしては中庸であり、オアシスは株価の下値不安を強く感じる必要は少なく、株主として今しばらくとどまり、投資リターンのアップサイドを追求すると考えられます。

 この結果、ツルハ・クスリのアオキの両経営陣は、短期的に着実に業績を伸ばすこと、加えて中長期的な成長の布石を打つことが求められます。さもなければ、現経営陣の信任がさらに低下し、アクティビストの信任(つまり経営体制の刷新の可能性)が高まる構図になるからです。これは株主価値の下支え、底上げにつながりアクティビストにとって歓迎すべき状態です。ここで、イオンがこの2社との資本関係の強化を通じてドラッグストア業界におけるイオングループの成長と高収益をフルに発現させたいと考えるのであれば、2社の株価を少しでも安く買い増したいと考えるはずです。その場合、オアシスの投資回収は早まることでしょう

 この事案の焦点は、ツルハ・クスリのアオキがイオンとの関係をどうするのか、どのようにドラッグストア業界の集約の青写真を描くのかに移っていると思います。案外早くその回答が出てくるのではないでしょうか。

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記事執筆者

都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。

米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

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