「リテールメディア」とはなにか?なぜ今注目されているのか?2023年最新事例解説
2022年に一躍バズワードとなり、流通・小売に携わるビジネスパーソンの注目を一気に集めた「リテールメディア」。2023年に入ってからもその注目度は高まる一方で、小売、メーカー、IT企業、広告会社を巻き込んだ一大ムーブメントとなりつつある。なぜ、リテールメディアは業界関係者の注目を集めるのだろうか。
「リテールメディア」とは何か、注目される背景は?
国内小売において、リテールメディアの取り組みはドラッグストアや家電量販店などが先行してきたが、最近は食品小売の事例も増えてきている。2022年9月に、コンビニ最大手のセブン–イレブン・ジャパン(東京都)がリテールメディア専門組織を新設したことも注目を集めた。
ここで改めて、リテールメディアについておさらいしておこう。リテールメディアとは、顧客の購買データ、あるいは行動データといった小売業が独自に収集・所有するデータ、いわゆる「ファーストパーティー・データ」を活用して広告を配信する手法のことを指す。
「メディア(広告媒体)」となるのは、店舗やスマホアプリ、ECサイトなど小売業が従来持っている「顧客接点」だ。リテールメディアという言葉だけを聞くと、店内に設置したデジタルサイネージから広告を流すことをイメージする人が多いかもしれないが、実はそれだけに限らないのである。
なぜ、リテールメディアが注目されるようになったかについても確認しておこう。さまざまな要因があるが、最も大きなインパクトだったのが米小売大手の広告事業の成功だ。米国における、リテールメディア市場の過半を握っているのがアマゾン(Amazon.com)である。
アマゾンの2022年の年間広告売上高は対前年比21%増の377億3900万ドル(約5兆4000億円:1ドル=143円で換算)だった。巨大すぎてイメージしにくいが、これはグーグル(Google)、メタ(Meta Platforms)に次いで、世界のデジタル広告市場で3位の規模となる。
リアル小売世界最大手のウォルマート(Walmart)も近年は広告事業にアクセルを踏み込んでいる。2021年初めにデジタル広告を扱う部門を「ウォルマート・コネクト(Walmart Connect)」として再編し、広告事業を強化する方針を打ち出した同社。23年1月期通期の広告売上高は、前期から約30%伸長し、27億ドル(3861億円)に達している。全体の売上高6112億8900万ドル(約87兆4000億円)からするとわずかな規模だが、「リアル小売が4000億円近い広告収入を得ている」という事実は、ほかの小売業にとっても大きなインパクトになっているとみていいだろう。