九州で進む「共創」 ゴミ処理コストを激減させ資源にする「有価物ルート回収」の成果とは
高額なゴミ処理コストを激減、
今後の課題はオペレーション、さらなる展望も
トライアルグループの総務、経理業務などを一手に担うトライアル・シェアードサービスのファシリティサポートグループ 岩見和幸グループリーダーは「自転車や鉄くずなどはこれまでお金を払って処分していたが、有価物として買い取っていただくという選択肢があることを知り、コスト面で大きなメリットがあることがわかった。ゴミも減り、バックルームを効果的に使える」と語る一方で、「店舗の作業負担を最小にするために、効率的に運営できる仕組みを整えていきたい」と今後の課題を口にした。
西鉄ストア総務人事部総務課の堤香織課長も「これまでは産業廃棄物としての処分が、有価になるものもあるという認識がなかった。今回の回収は環境面でもコスト面でもメリットがあるためとても有意義な取り組みだ。当社は佐賀県にも店舗があるため、佐賀ルートも構築できるのであればぜひ取り組みたい」と語る。
イオン九州ではすでに有価物回収を始めてはいたものの、一部にすぎず、金属などの多くは「混合廃棄物」として産廃処理をしていたという。
「今後、よりいっそうサステナブルな取り組みがもとめられるなか、分別が課題となる。店舗側に負担がかからないオペレーションの構築に取り組みたい。たとえば、改装時は多くの廃材が出るが、什器などを解体時に分別しておけば、回収時に大きな労力を費やさずスムーズに進められるので、知見を集めながら効果的な手法を探していきたい」とイオン九州総務部の松本勇紀氏は展望を語る。
ただ、今後有価物回収を全社ベースで取り組むために何よりも大事なことは、「社内に賛同者を増やすことだ」と九州総務連合会のメンバーは口を揃える。
「『分別している暇なんてない』などと言われないように、社内の賛同者を集めるとともに、『店の経費が浮き、その分修理や新しい備品の購入に充てられる』といった店側が協力するメリットも伝え、この取り組みを定着させたい」(トライアルカンパニー防犯DX推進部部長の荒木翼氏)
今回は有価物回収だったが、総務部門が「共創」できることは多岐にわたりそうだ。
「環境の取り組みの中で、店舗での資源回収など企業の枠を超え取り組むことで、お客さまの満足度向上により、集客効果につながれば」と先述の西鉄ストア堤氏はアイディアを口にする。
総務連合会でトライアル側の代表を務める荒木氏は「定期的に話し合うことで、各社の悩みも共通の課題もわかってきた。自社の強みを他社に提供する一方、自社が知らなかったことを他社から学べる点はとても大きい。今回のコスト削減や環境の取り組みという重要課題にも直結する。ぜひ、多くの企業に参加していただきたい」と語った。
なお、今回の有価物回収実績は40カーゴ分で計3260㎏。チャーター代、回収代などを除いて5店舗が得た金額は総額で約1万6000円。5店舗それぞれで回収をしていたら32万円かかっていたので、都合33万6000円のコストメリットとなった。走行距離も個別に回収車を走らせていたら186km掛かっていたところ、わずか63㎞に短縮された。
コスト面でも環境面でも、メリットがはっきりと見えた今回の取り組み。今後、九州総務連合会では今回の知見をもとに分別のルールを整備し分別も完了、今上期中に有価物に限らず、産業廃棄物の四半期ごとの定期便回収を本格稼働させていく考えだ。