マッキンゼーが解説する、「リテールメディア」課題と攻略方法とは!
前回は小売業界における成長機会として、海外、とくに東南アジア市場への進出についてご紹介した。一方、日本国内は成熟市場ではあるが、「健康」を切り口としたコンシューマーヘルス、サステナビリティ、製造小売への転換、デジタルを活用したB2B領域など新たな成長機会がないわけではない。今回はとくに、小売業界にとって新たな成長機会となる「リテールメディア」の在り方とグローバルの先進事例、日本市場での拡大の方向性について論じていく。
アマゾンが市場の約8割を占める
サーチメディア、ソーシャルメディアに続く第3の波として「リテールメディア」が急速に立ち上がっている。リテールメディアとは、顧客の購買行動など小売業が独自に収集・所有するデータを活用して広告を配信する手法のことだ。日本ではトライアルホールディングス(福岡県/亀田晃一社長)、ファミリーマート(東京都/細見研介社長)に続き、2022年12月にはセブン‐イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長)が参入を発表した。
リテールメディアですでに大きな成果を出しているのはアマゾン(Amazon.com)だ。同社の21年のリテールメディアの収入は約310億ドルであり、市場の約8割を占めている。しかし、この市場はアマゾンなどデジタル出自のプレーヤーの独壇場ではない。近年ではウォルマート(Walmart)、クローガー(Kroger)など実店舗中心の企業も参入し、多いところでは20億ドルほどの広告収入を得ている。これはECの流通総額の約1割に相当する水準だ(図表❶)。マッキンゼーが実施した米国の消費財企業188社対象の調査では、アマゾン以外の実店舗主体の小売事業者のうち、リテールメディアを利用している企業は8割にも及んでおり(図表❷)、リアル小売企業の存在感の高まりが見て取れる。さらに近年では北米から西欧へ、大手小売から中堅小売へと裾野も広がっている。
リテールメディアの広告媒体は店舗のデジタル・サイネージだけではない。たとえばウォルマートのリテールメディアを使うと、消費者がEC(アプリも含む)で特定の商品を検索・閲覧したときに広告を掲載できる。それにより消費財企業は、自社の商品カテゴリーに興味がある消費者や、競合商品を検討している消費者にリーチし、自社商品を訴求できる。さらに、ウォルマート以外のウェブサイトにも広告を出稿でき、利便性も高い。
消費財企業にとっての3つのメリット
リテールメディアは、消費財企業にとっても3つのメリットがある。
1つめは、