第5回 東急ハンズ、ウエルシアに学ぶ!コロナ禍の新買い物行動に対応する「売場の流儀」とは

倉林 武也
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コロナ禍の直後に展開された東急ハンズの新習慣スイッチマーケット

2020年3月の緊急事態宣言下のステイホームによって、「リモート飲み会」「自宅筋トレ」「おうちでキャンプ」など様々なトレンド(テーマ)が生まれた。それは、「コロナ禍の今だからできるコト」でもある。東急ハンズではそれらを踏まえ、新習慣に切る変える様々なアイデアを「新習慣スイッチマーケット」として展開した。

こうした取り組みは業態を問わず多くの店舗で見られたが、東急ハンズは、コロナ禍による不安や消費の減退が起こる中で、気持ちと行動を切り替える(スイッチを入れる)ことで、従来とは違う生活様式の中での楽しみや発見の仕方を訴求する点で、際立っていた。

新習慣スイッチマーケットの看板

コロナ禍と防災意識を捉えた「ながら備蓄」の展開

食料品・飲料・生活用品・化粧品など、普段使うモノをちょっと多めに買い置きして、使ったらまた買い足す――。これは、経済産業省が推奨する、日常から緊急時の備えをすることを目的とした新習慣「ながら備蓄(ストック)」だ。防災の日などに行う防災用品の訴求との違いは、使いながら(食べながら)補充するローリングストックの視点がある点だ。

売場では写真のように、従来の災害対策、緊急事態を思い浮かべる黒色と黄色のツートンカラーで恐怖感を煽るのではなく、「気軽に試してみましょう」といった呼びかけがある。インサイトを行動につなげる際に、こうした表現(初動を起こしやすくする見せ方や伝え方)や印象はポイントになる。

ながら備蓄の看板

売場での撮影をOKにするメリット

業種業態を問わず、売場での写真撮影を禁止する店舗は多い。理由は価格表示や展示方法などの競合店対策や、ショールーミングの防止などが背景にある。ところが、コロナ禍において「買い物中に購入するかしないかを迷う際に、売場でゆっくり検討することに躊躇することがある」「長い時間立ち止まって考えるくらいなら購入をしない」などの声(ホンネ)や買い物中の傾向が見つかった。

ある小売業ではこれをチャンスロスとして捉えて、写真のように「お買い物に迷ったら、商品やサービスを撮って、相談したい人に聞いてみよう!」と訴求し撮影を奨励していた。

売場で撮影を促す看板

洗剤も柔軟剤も量り売りで?

10月にオープンしたウェルシアイオンタウン幕張西店では、ウエルシアホールディングスが花王と企画した売場「量り売り堂」を展開。注目を集めている。これはお客が来店時に持参したボトル、もしくは量り売り堂オリジナルボトルに、お客の希望量を補充して販売するサービス(食器用洗剤と柔軟剤、衣料用濃縮洗剤、おしゃれ着用洗剤の4商品が対象)。

未来のために容器を「捨てない」選択をするために、省資源とごみの削減につながる取り組みとして、もったいない精神といったインサイトに働きかけた施策。今後、こうした取り組みは業種業態を限らずに生まれてくるものと思われる。

量り売り堂の売り場

インサイトを見つける方法

このようにショッパーのインサイトをテーマや切り口にして、自社の商品の購入やサービスの利用につなげようとする様々な取り組みが売場では多く見られる。それらの展開が「集客数や客単価が上がらない」または、「自社製品の店頭での取り扱いや、指名買いにつながらない」と言った課題を持つ小売業やメーカー企業においても〈ヒント〉になる。

商品やサービス自体が違っても、そうした売場での展開がショッパーのどの様な望みや悩み(これらを掘り下げることがインサイトの追求)を捉えて、商品やサービスを介して解決をしようとしたかといった「ストーリー」や「文脈」を見つけることがポイントになる。

ショッパーのインサイトを見つけようとする人が、そのスキルアップを図るには、こうした売場や売り方の中にある〈ヒント〉に目を向け続けることがとても重要なことだと思う。

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