一食2000円のカレーを1000円で出して利益をだすには… もうやんカレー、意外なコスト削減の方法とは
― 今は、相当に難しい時期です。コロナ禍で多くの飲食店が閉店しました。
辻 お客さん自体が減ったことがきっと大きいのでしょうが、家で食事を作り、食べる人が増えたこともあると思います。時代が変わりつつあるのです。最近は、スーパーで売っている食品の質がとてもいい。レンジで温めるだけでものすごくおいしい。もう、飲食店でわざわざ食べる時代ではなくなりつつあるのかもしれません。もうやんカレーのソースもスーパーで販売しています。
つまり飲食店の経営には、お客さんが本当に食べたいものを徹底して追求していくことがいっそう求められているのです。
―「お客が食べたいものを追求する」ためには、どうすればよいのでしょうか?
辻 お客さんに直接お聞きするのがいいと思います。実は1号店をオープンさせた当初、経営危機の時期があったのです。昼間は会社員のお客さんがたくさん来てくれましたが、夜になるとオフィス街だったこともありお客さんが少なくなる。
来店してくれたお客さんにはよく「本当は、何を食べたいのですか?」と聞きました。売れなければ仕方がないですから、恥も外聞もありませんでした。ある時、中年の男女のペアが「サラダが欲しい」「一品料理も食べたい」「ワインもいいな」と答えてくれました。それですぐにメニューの変更を考えました。変更にあたっては、いきなり新しいものをメニュー盛り込むのではなく、まず業者さんにお聞きしました。他のお店で扱っているものならば、お客さんがわざわざ来ないでしょう。それで考えたのが、「鴨の炙り焼き」と「セロリとホタテのサラダ」。これがありがたいことに飛ぶように売れて、経営が軌道に乗るようになったのです。
私は常に、「お客さんが求めているものはなんだろう」と徹底的に調べるようにしています。例えば味。特にこの5年で、多くのお店で味が濃くなってきました。普通では物足りないというお客さんが増えているのだと思います。だからこそ、「もうやんカレーに行かないと食べることができない味」にするわけです。
売れる商品を作るのは難しいです。それでも愚直にお客さんのことを考え続ける、それしかないのではないでしょうか。