業務統一に効果的なSOCとは?マニュアルの「納得感」を高める方法を解説!
業務基準書(マニュアル)を活用した現場作業の改善について、実際の事例をまじえながら解説する連載「マニュアル活用! 店舗経営者のための現場改善」。第3回は「業務基準書作成の骨格づくり」についてお伝えしました。今回は、業務基準書作成の骨格である「業務SOA(サービス・オペレーション・アナリシス)と作業SOAの評価と記述」について解説します。
業務を評価する6つの軸
小売・サービス業のマニュアル作成で最も難しいのは、業務方法を統一することです。なぜなら、店舗によって運営条件が変わったり、個人の経験に依存したりすることが多いからです。
店舗によって売場レイアウトや面積、品揃えが異なるため、仕事のやり方を統一すると生産性が落ちる店舗が発生します。また、接客や応対などは、個人の過去の経験が仕事のやり方に大きく反映されます。時間がかかってもよい接客をして褒められれば、それが成功体験となり、同じような接客を繰り返すことになります。そして、そのやり方は後輩に伝えられていきます。
別の場合では、時間をかけて丁寧に接客をしても、顧客から指摘を受けたり、上司から叱られたりすると、スピード重視の接客を重視するようになります。これは現場だけでなく、指導者も同じです。そのため、運営部長が変わるたびに業務方法の変更が頻繁に起こるのです。
さらに、製造業のように、決められた手順で作業していなくても、スピードの低下やクレームの発生などがすぐに顕在化するわけではないので、全員が合意できる作業のやり方を設定するのは難しいのです。そこで効果的なのが、経営理念・経営戦略・SOC(サービス・オペレーション・クライテリア)による業務評価です。
SOCとは業務を評価するための軸のことです。主に「効率・ムダ」「丁寧・気配り」「費用」「スピード・タイミング」「安全・安定」「意欲」という6つの軸で仕事のやり方を評価します。
SOCによる業務評価の進め方
小売・サービス業の仕事には正解がありません。そのため、業務評価で重要なのは「納得感」です。納得しないと実行されないからです。納得するためには、お互いの成功体験を持ち寄り、対話することが必要です。対話するときに必要なのが、業務基準書の骨格として作成したSOAです。作成した作業SOAをホワイトボードに貼り付け、議論していきます。
まず作業SOAの順番を、経営理念・経営戦略・SOCの軸で検証していきます。「効率・ムダ」の視点で問題はないか、「丁寧・気配り」で問題はないかといった具合です。
ある書店では、どの書籍を先に出すかで議論になりました。その書店では、書籍が届くと、作業しやすい順に売場に並べており、結果として、当日発売の雑誌を並べるのが遅くなっていました。その書店の方針は「リアルの書店での価値の提供」でした。リアルの書店の価値について考えると、「雑誌は開店と同時に並べるのがよい」という結論に達しました。そのため、作業効率は落ちますが、雑誌を先に並べてからその他の書籍を陳列することにしたのです。
作業の順番が決まったら、作業SOAを一つ一つ確認し、内容に合意していきます。もっとも、作業SOAで業務を見える化して対話を行っても、必ず合意できるとは限りません。意見が割れることはよくあります。
とくに対立しやすいのは、速い作業と丁寧な作業です。その場合は、現場の実作業を撮影した動画を見て判断するのがよいでしょう。動画であれば、自分の作業を客観視でき、冷静に評価できるからです。事実をもとに議論すれば、作業の統一がスムーズになります。ただ、動画で2つの作業を見比べても、あまり大差がないことも多いです。もし一つのやり方に合意できない場合でも仮で統一し、のちに不具合が出たら変更するとよいでしょう。
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