エバラ食品工業 代表取締役社長 宮崎 遵
独自性のある調味料を開発し、生鮮品の需要拡大に貢献する!
たれの進化に着手し「黄金の味」をリニューアル
──2017年3月期業績は2期連続で増収増益でした。好調の要因は何ですか。
宮崎 1つは、昨今の精肉需要の高まりが挙げられます。2000年代にBSE(牛海綿状脳症)問題の影響もあって一時的に需要が停滞し、当社も踊り場のような状況を経験しましたが、10年代に入ると、赤身肉の人気が高まり、肉ブームが到来しました。現在も好調に拡大しています。熟成肉やかたまり肉といった新しい食べ方が注目されるようになり、家庭や外食、バーベキューなどさまざまな場面で肉を楽しむ機会が増えました。それに比例して、たれの需要も高まっています。
もう1つは、「プチッと鍋」に代表されるポーション調味料の成功です。当社の女性開発担当者の発案で商品化したものです。13年の発売初年度に売上高約9億円を記録するヒット商品となり、それから4年で30億円を超えるまで急成長しています。
──「プチッと」シリーズが大ヒットした要因をどのように見ていますか。
宮崎 「調味料は容器・容量でイノベーションする」といいますが、まさにそれを具現化したのが「プチッと」シリーズです。調味料を1人前のポーションに入れることで、新しい価値を提案したと自負しています。
興味深い調査結果があるのですが、パウチタイプの鍋の素は週末によく売れる一方で、「プチッと鍋」シリーズは月曜や火曜など平日に売上が伸びるそうです。おそらく味噌汁がわりの具だくさんスープやおかず鍋として利用したり、個食・使いきりニーズの高い食卓で使用されたりしているのでしょう。この背景には、ライフスタイルの変化や単身世帯の増加などがあります。「プチッと」シリーズが成功したのは、こうした時代の変化にいち早く対応した商品だったからだと思います。
今、社会は大きく変わりつつあります。超高齢化、世帯人数の減少、共働き世帯の増加、人口減、社会の成熟化によるお客さまニーズの多様化という5つの社会変化に対して、もはや小手先の商品政策では対応しきれなくなっています。会社自体を抜本的に革新していかなくてはなりません。そうした考えから、5カ年の経営ビジョン「Evolution 60」を策定しました。
──「Evolution 60」について具体的に教えてください。
宮崎 創立60周年に向けた中長期戦略で、15年3月期からスタートしました。基本とする戦略方針は「エバラブランドの価値向上」と、当社にしかできないことを積み上げてトップポジションを確立する「ニッチ&トップポジションの確立」と定め、「たれの進化」と「コミュニケーションの進化」を経営の軸としています。これにより、国内市場での安定的収益と海外市場での成長基盤の確保を図ることで、継続的な成長の実現をめざします。
「Evolution 60」第2ステージの1年目である17年3月期は増収増益となりました。これまで積み重ねてきた施策が着実に結実していることを実感しています。
──18年3月期は、どのような施策に力をいれますか。
宮崎 たれを進化させることに大きく踏み出します。その最たるものが「黄金の味」の刷新です。年間出荷本数約4000万本という焼肉のたれのトップブランドですが、当社が調べたところ、ユーザーの満足度は非常に高いものの、まだ7割以上のご家庭でお使いいただけていないことがわかりました。
そこで、ご愛顧をいただいている味のベースは大きく変えずに、主原料の製法、容器・容量・デザインを含めて、さまざまな角度から見直しを図りました。発売以来初の大幅リニューアルで、開発期間は2年にも及びました。今回進化した点は4つあります。まず、「黄金の味」のおいしさのポイントであるフルーツピューレを、新製法によって、コクととろみをこれまで以上に実感できるようにしました。主原料であるリンゴはすべて国産品に変更し、生産工程を見直したのです。
次に、「甘口」「中辛」「辛口」の特徴を明確にしました。味にはっきりと差をつけたことで、使用シーンはさらに広がると思われます。
そして、多様化するライフスタイルやニーズに対応するため、個食タイプから大容量までラインアップを拡充しました。また、新開発のペットボトル容器を採用したことで、従来品より軽量化を実現しました。これによりお客さまが使いやすくなると同時に、店頭で商品を陳列している方の負担軽減にもつながるはずです。
さらに、「果実がたっぷり使われているフルーツベースの焼肉のたれ」という魅力をアピールするために、フルーツのイラストを入れたパッケージデザインに一新しました。また、ユニバーサルデザインフォントを採用し、より見やすく、わかりやすい表示へと変更しました。
新しく生まれ変わった「黄金の味」は7月10日より発売しておりますが、これこそが「Evolution 60」の目標である安定的な収益基盤強化への確かな道筋であると確信しています。