アクシアルリテイリング(新潟県/原和彦社長:以下、アクシアル)が2021年3月期決算業績を発表した。同時に明らかにしたのが今期から3カ年の新中期経営計画だ。新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大の影響で、食品スーパー業界に追い風が吹くなか、同社はどのような成長戦略を描いているのか。
売上、利益ともに過去最高 ROAは11.5%に!
アクシアルの21年3月期決算業績は売上高が対前期比6.4%増の2563億円、営業利益が同28.0%増の121億円、経常利益が同29.5%増の125億円(経常利益率4.9%)、当期純利益が同32.7%増の82億円。感染症拡大の影響により、内食やまとめ買いニーズが高まったことを受けて、売上高、各利益ともに過去最高を達成している。
同社が重点指標と位置付けるROA(総資産経常利益率)は、同2.0ポイント増の11.5%となり、当面の目標と掲げていた10%を上回る結果となった。
フレッセイの収益性が原信・ナルスと同水準まで向上
このうち、群馬・埼玉・栃木で店舗展開するグループ会社のフレッセイ(群馬県)は、売上高が同7.0%増の814億円、営業利益が同53.6%増の36 億円、経常利益が同62.0%増の38億円と、商勢圏が首都圏に近いことで感染症拡大の影響をより強く受け、新潟県を地盤とする原信・ナルスよりも大きく業績が伸長した。フレッセイの営業利益率は4.5%、経常利益率は4.8%と原信・ナルスと同様の水準まで高くなっている。
コロナ収束後も同水準の売上高を稼ぐ!
業界のなかでも高い収益性を誇るアクシアルは、コロナの追い風を受けて今後どのように成長を図っていくのか。
同社が明らかにした新・3カ年中計では24年3月期に、売上高はコロナの影響を受けた21年3月期と同水準の2540億円、経常利益率は4.2%の達成を掲げる。毎年4店舗ずつ計12店を新規出店し、店舗数を137店舗まで広げる方針だ。
こうしたさらなる成長を実現するべく同社は21年3月期には10年ぶりにグループビジョンを更新。「エンジョイ!アクシアル セッション♪」を新たに掲げた。同ビジョンには、グループ各社、ひとり一人の従業員が自律的に技量を磨き、全体で“調和”のとれた活動を行うことで今まで以上のマスメリットを創出し、新たな価値を提供できる組織をめざすという意味が込められている。
食品製造子会社で独自商品を続々と開発
とくに注目したいのが、同社が“調和”と呼ぶ、グループ会社との連携により成長を図る取り組みだ。
たとえば、食品製造会社のローリー(新潟県)では近年、製造拠点の拡大を推進してきた。18年には「中之島チルドセンター」(新潟県長岡市)に併設させるかたちで、ベーカリー、精肉、水産のプロセンスセンターを新設。なかでもべ-カリーは冷凍生地を活用して1日2万5000個のパンを製造し、一部商品は原信・ナルスだけでなくフレッセイにも出荷している。
ローリーの機能を生かした最近の新商品には、3月から一部店舗で販売する「小国饅頭」がある。長岡地区の銘菓の1つで、製造・販売していた老舗専門店が廃業することを受けて、ローリーが同店から製造ノウハウと機械を承継。原信・ナルスの名物商品であるおはぎの餡を活用して商品化しており、今後、新たな名物商品へと育成してく考えだ。
発注やネットスーパーのシステムを子会社で内製化
また、情報処理及びソフトウェアの開発業務を担うアイテック(新潟県)では、自社の状況に即した独自のシステム開発を進める。たとえば、外部のIT企業とも手を組んで、AIをはじめ最先端技術を活用したアクシアル独自の自動発注システムを開発するほか、コロナ禍で大きく伸長したネットスーパーにおいても、今後のさらなる成長を見込みパッケージソフトをアイテックで内製化した。
グループ間での“調和”についての事例として、アクシアルでは「留学」と呼んで、アイテック従業員が数カ月間、食品スーパー店舗で勤務する機会をつくっている。そうすることで、IT人材の現場感覚を養うとともに、グループ企業間での人材交流を図ることで、現場に即したシステムを連携して開発できるようにしている。
アクシアルの新中計では3年間で230億円の設備投資を計画する。なかでも、ここで紹介したITと食品製造に積極的に投資していく考えだ。このうち食品製造について原社長は「生産拠点の拡充をさらに進めて、他店にはない独自商品をいっそう増やしていきたい」と述べている。関東・北関東を中心にアクシアルの商勢圏では価格競争が激化しているが同社は「積極的に価格を打ち出していくつもりはない」(原社長)方針で、独自商品によって差別化を図っていく方針だ。