元ウーバー社員が、北欧発の新興フードデリバリー「ウォルト」の成長性に賭けた理由
ネットスーパーとのコラボも視野に? 飲食店以外との提携を拡大する理由
――さて、ウォルトでは昨今、飲食店以外との提携も増えています。今年春には「ナチュラルローソン」(東京都内が対象)、「ポプラ」(広島市内が対象)、「北野エース」(仙台市内が対象)、さらに直近では「ツルハドラッグ」「セイコーマート」(いずれも北海道内が対象)と相次いで手を組みました。
安井 グローバルではもともと、小売店との取り組みも積極的に行ってきました。フードデリバリーという枠ではなく、「欲しいものがすぐに届く」というプラットフォームをつくることがウォルトのめざす方向です。日本でも進出以来、小売店の商品を届けてほしいという声を多くいただいていましたし、企業側から問い合わせをいただくことも少なくありませんでした。この春に提携した企業さまとは、経営陣の皆さまと今後の小売の在り方も議論しながら、稼働にこぎつけたところです。
――ただ、生鮮食品や日用品など、飲食店とは大きく異なる商品を扱うことになります。その点で参入ハードルは高くないのでしょうか。
安井 たしかに、在庫管理一つとってもまったく別の仕組みですし、広大な売場から注文品をピックアップして梱包するというプロセスも手間の大きいものです。
そうした課題に対し、ウォルトは小売店向けのピッキングアプリも独自開発しており、現場での作業効率向上をサポートしています。デリバリーサービスによって売場に負担がかからないようにすることは、我々も大きく重視しています。
――日本ではコロナ禍でネットスーパーへの需要も急増しています。この領域に今後積極的に打って出る考えはありますか。
安井 ぜひやりたいですし、実際にいくつか話は進んでいます。売場の大きさや生鮮食品の配送といったオペレーション面で解決すべき課題はありますが、それ自体が導入を大きく妨げるほどのことではありません。欧州ではすでに仏カルフール(Carrefour)と食品の配送で提携しています。
もっとも、既存のネットスーパーと、我々が提供するオンデマンド型の即時配送サービスはまったく異なる性質のものです。前者については小売側でも対応可能でしょうが、後者については我々のような専門業者と組んだほうが早いでしょう。
いずれにしても、コロナ禍で食品配送サービスへの需要が高まるなか、ウォルトが配送インフラの一部分を担うことは、大きな意義があると考えています。
短期的なシェア拡大を急がず、“愛されるブランドづくり”に注力
――今後の成長戦略をどのように描いていますか。
安井 前提として、ウォルトは日本市場に関しては中長期でコミットしていく考えです。そのなかで短期的にはサービスエリアを拡大し、今年中に50都市、来年末までに100都市での展開をめざします。これは決してストレッチした目標ではなく、実現可能な目標として掲げている数字です。
そして中長期では、毎日使うサービスになれるよう、「ショッピングモールをポケットに」という世界観の実現をめざし、取り扱いカテゴリーの拡大に注力していきます。新しいインフラであるデリバリーサービスとして、国内のリーディングカンパニーになることをめざします。
――コロナ禍で国内のフードデリバリー市場は乱戦模様です。今後この勢力図はどう変化すると予測し、そのなかでウォルトはどう戦っていく考えですか。
安井 他国と同じように、最終的には数える程度のプレーヤーがマーケットを寡占していくかたちになるでしょう。そうした状況を迎える前に、ウォルトとしては“愛されるブランド”になっていくことがカギになります。そのためには、短期的なシェアアップをねらった非効率な投資をするつもりはありません。サステナブル(持続可能)な経営を続けつつ、そのなかでリピーターやファンを創出していきながら、中長期的なシェア向上を図っていきます。