15年ぶりの大刷新!JFRカードが一翼担う、業態変革の先にある百貨店再生シナリオとは
利便性高めた新ポイントプログラム
JFRカードは2021年1月、30~40代女性を新たに取り込むべく、「大丸松坂屋カード」を大きく刷新した。導入された新ポイントプログラム『QIRA(キラ)ポイント』は、そのための重要施策のひとつだ。「従来の百貨店ポイントに加え、日常のあらゆるシーンでカード利用によってポイントが貯まる。今後はポイント付与の連携先を増やすだけでなく、他のポイントに変換できるようにし、さらに利便性を高めていく」と二之部社長は語る。
同社のカード取扱高は、外部取扱高比率の上昇もあり、百貨店の売上が厳しいなかでも毎年微増傾向にある。ただし、今回のカード刷新に当たってはあえて年会費を上げることで、カード発行枚数を減らしている。同社カードのアクティブユーザー比率を高めるとともに、年会費収入の増加を原資に利用額の多い顧客のメリットを高めるのがねらいだ。
そのため、今回の新ポイントプログラムは他社のサービスを意識しつつ、かなり戦略的な内容となっている。
例えば、大丸松坂屋カードをクレジット利用すると大丸・松坂屋のポイントに加え、キラポイントも付与される。同ポイントは、優待やセール品も対象となるだけでなく、これまでポイント付与対象外だった、百貨店にテナント入居するラグジュアリーブランドの商品購入もキラポイントが付与されるようになる。
また、キラポイントはTポイントや楽天ポイント、Amazonギフト券に移行でき、使い勝手にも優れる。大丸・松坂屋のポイントへの移行も可能で、所有者が自身の購買特性に応じた柔軟な使い方が可能となっている。
リアルの強みが百貨店カードのポテンシャル
こうしたポイントカードとしての利便性向上に加え、同社はカードとしての所有欲をよりくすぐる特典も検討しているという。「当社はモノを売るだけでなく、お客さまの『くらしの新しい幸せを支える』のが使命。特に多い女性のお客さまへ向けた『きれいになれるカード』、『健康でいられる、あるいは健康に関する情報があるカード』という位置づけにしていきたい。具体的にはエステの割引をつけたり、人間ドックの割引をつけたりということを行っていく」と二之部社長は明かした。
変革を模索し、もがく百貨店各社だが、やはり強みはリアルにある。店舗での接客や来店傾向の把握。さらにカード利用が増えれば、消費動向の詳細なデータ解析も可能になる。消費全体がECへ推移する中で、リアルの良さを最大化しつつ、カード利用の促進で利便性やお得感を高められれば、百貨店が再び存在感を取り戻すことも可能だ。
コロナ禍でキャッシュレス化が加速したことでカードの存在価値が高まっている。「もっとあなたに寄り添い、パートナーとして求められる1枚」をめざし、1月に15年ぶりにデザインを変更し、サービスも刷新した大丸松坂屋カード。その普及が、なかなか突破口が見えてこない百貨店に次なる道筋をつける可能性は十分にありそうだ。