ビジネスモデルを根本的に変える=西友兼ウォルマートジャパンCEO
オンラインに成長機会 店舗とつなぎ、シナジー創出へ
──今年1月に実施したPB(プライベートブランド)とNB(ナショナルブランド)の食べ比べ「横綱チャレンジ」のねらいは何ですか。
デイカス 横綱チャレンジは、PBの「みなさまのお墨付き」と有名メーカー商品を、ブランド名・商品名を伏せた状態で試食し、各商品を6段階(「とても美味しい」「美味しい」「やや美味しい」「あまり美味しくない」「美味しくない」「とても美味しくない」)で、お客さまに評価していただきました。東京・名古屋・大阪の3地域の約650人を対象に、第三者機関が行った公正で客観的な調査です。結果は3勝2敗3分けでした。みなさまのお墨付きが、品質や味でNBと同レベルかもしくはそれより高いレベルであることを証明できました。
横綱チャレンジに対するNBメーカーの反応は好意的でした。西友全体が成長していますから、PBの販売数量が増えたからといって、それがNBの販売低下につながるわけではありません。PBに絶対に負けないという自信もあったでしょうし、自社商品の今後の開発に対するヒントをつかめるかもしれないという考えもあったでしょう。PBのほとんどはNBメーカーが製造しています。そのPBへの評価を知ることにおいてもメリットがあったと思います。そういう意味ではウィンウィンの取り組みになりました。
「みなさまのお墨付き」「きほんのき」の14年度の売上は非常に好調で、対前年度比28%増でした。PBは今後も継続的に拡大を図っていきます。今年末までに全体で900品目まで引き上げる計画です。
──円安が続き、デフレも終息しつつあります。西友にとっては追い風ですね。
デイカス 日本は今、インフレ的な状況を必要としています。デフレはあってはならないと思います。われわれロープライスリーダーとしては、インフレ環境は追い風となります。
われわれはEDLCの組織です。どうすれば生産性をあげられるかということをつねに考えていますし、そのノウハウを体得しています。インフレの状況は、そうしたわれわれの能力が最も発揮しやすいのです。
──成長戦略について、どのように考えていますか。
デイカス これから数年の間に、日本の小売環境は大きく変化していくでしょう。最終的にどういうかたちで落ち着くかはわかりませんが、その変化の一翼を担いたいと思っています。
われわれ小売業は、ビジネスモデル自体を、あるいは成長戦略自体を根本的に考え直していくときに来ています。というのも、日本の経済、そしてお客さまの消費行動が大きく変わってきているからです。今、われわれが直面している変化は、世界の中でも先取りをして経験している変化です。何年後かには、世界が日本と同じような変化に直面していくと思います。
「新規出店は何店舗を計画しているか」と聞かれることがありますが、10年前ならこの質問も適切かもしれません。しかし今は、新店を何店舗オープンするかというのは、それほど重要なことではありません。ビジネス規模という観点から考えても、新店の数がそれを表しているかというと、そうではなくなってきています。出店は大切ですが、売上を成長させていくためのチャネルの1つにすぎません。
オンラインには大きな成長機会があります。われわれはオンラインの売上を5割以上伸ばしましたが、オンラインへの投資負担は、店舗出店の場合に比べて軽い。オンラインと新規出店は、ビジネス拡大の2つの異なる手法にすぎませんが、この2つの手法は投資収益の観点からビジネスモデルが異なります。ですから、いかにこの2つのチャネルのバランスをとっていくかが戦略上重要になってきます。これまでのように、新店をたくさん出すことが成功の方程式になるとは思えません。
これからは全体的な観点をより大事にしていく必要があるのです。オンラインのビジネスと店舗のビジネスをつなげることでシナジーが期待できます。小売業は、オンラインと店舗で、お客さまにとって最も利便性が高いポイントがどこなのかを注意深く探していかなくてはなりません。
われわれの役割は、お客さまが欲しいと思う商品を揃え、それをお客さまのもとに届けるということにつきます。それを、オンラインと店舗のビジネスでどう実現するかということになります。主軸に置かなければいけないのは商品であって、商品力がなければ、どのようなチャネルを使ったとしても、われわれの役割は果たせないでしょう。