混戦!フードデリバリー 「出前館」藤井英雄社長が語る次なる戦略 プロダクト強化と地方拡大とは?

若狭 靖代(ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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地方でのサービス拡大に秘策あり

 地方でのサービス拡大も出前館の重要目標だ。前述の通り、店舗からの配達がベースになっている出前館はこれまで、自前で配送サービスを行っている飲食店がその地方になければ、そもそも進出することができなかった。現地で配送員を集められればサービスが開始できる、Uber Eatsとの“機動力”の差は大きい。

 この問題を解決するために、出前館では地域の軽貨物業者と直接契約するという方法を新たに取り入れた。これにより、既にその地域を知り尽くしている配送のプロを一気に確保することができるだけでなく、出前館が競合との差別化において重視している配送品質についても高く維持することができた。現在、北海道小樽市・札幌市、和歌山県和歌山市などで軽貨物業者との契約による配送サービスを立ち上げ、「非常に手応えを感じている」(藤井氏)という。

クラウドキッチンでさらなる拡大をめざす

 さらに20年12月21日、出前館は複数のクラウドキッチンを併設した「デリバリー旗艦拠点」を東京都江東区大島にオープンした。クラウドキッチンとは、通常の飲食店とは異なり飲食スペースを持たず、主にデリバリー向けの調理製造のみに特化した店舗のことを指す。複数の店舗がキッチンを共有している場合が多いことが特徴で、直近では「塚田農場」を運営するエー・ピーホールディングスや、「カプリチョーザ」「ハードロックカフェ」を運営するWDIなども相次いでクラウドキッチンを開設するなど、外食業界では大きなトレンドの1つになっている。

 出前館のクラウドキッチンは、3つのキッチン設備で10ブランド以上の商品を取り扱う体制でスタート、現在のところ想定を超える売上になっているという。オープンにあたり重視したのは、「そのエリアにないものを持ち込むことと、実際に店舗があるブランドを展開すること」(藤井氏)だ。出前館でなければ扱っていないジャンルやブランドを取り揃えることで、競合サービスとの強力な差別化に繋げる方針だ。クラウドキッチンモデルは、小規模な都市への進出への足掛かりとしても期待できる。

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