混戦!フードデリバリー 「出前館」藤井英雄社長が語る次なる戦略 プロダクト強化と地方拡大とは?

若狭 靖代(ダイヤモンド・チェーンストア 記者)
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ファミリー層の重視で生まれた“あのCM”

 さらなる知名度向上のため出前館は20年、マーケティングに注力。LINEから出資を受けた300億円のうち、半分の150億円をマーケティング費用と定め、TVやウェブなどで積極的な宣伝活動を展開した。

 TVCMの制作にあたっては、競合サービスであるUber Eatsのように、都会的でスマートなイメージの打ち出しを推す声も社内にはあった。しかし、Uber Eatsは単身世帯の利用が多いのに対し、出前館はこれまでファミリー世帯に多く支持されてきた。「イメージ路線を変更するということは、今の客層を捨てることになってしまう。あくまで今の路線で強みを伸ばすことが大切」(藤井氏)という考えから、ダウンタウンの浜田雅功氏を起用し、「♪で、で、出前館、出前がスイスイスイ~」と印象に残るフレーズで昨年話題になったCMが生まれたという。

2021年はプロダクト強化の年

 一方、21年に重視する戦略について、「2020年は加盟店強化とマーケティング戦略の年だったが、21年は配送システムやアプリの刷新など、プロダクトを強化する年になる」と藤井氏は話す。出前館は今でこそ“配達代行”を一部で行っているが、もともとは自前で配送員を持っている飲食店とユーザーのマッチングのみを行うサービスだった。そのため、最初から配達代行サービスとして展開しているUber Eatsに比べ、アプリの機能や配送効率の最適化といった面ではやや後れを取っているのが現状だ。

 たとえば、Uber Eatsはアプリ上で、現在の配送状況をユーザーが詳細に追跡することができる。これは全体の75%を店舗からの配達が占める出前館では、今まで提供できないサービスだった。また、店舗配達が前提のシステムが使用され続けてきたため、代行配達でのマッチングが効率的でないことも問題の一つだ。これらの問題を一挙に解決するため、「インターフェースを含めて大改修を行う。外資系で日本に開発リソースを持たないUber Eatsにはできない、日本の消費者のニーズに特化したデリバリーシステムを構築し、強みとしていきたい」と藤井氏。さらに、購入履歴などを元にしたリコメンド(お勧め)システムや、パーソナライズされたクーポン配信なども新たなサービスとして取り入れる方針だ。

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