メニュー

ヨークベニマル、ライフフーズに学ぶ!魅力的で儲かる総菜売場の作り方!

ヨークベニマル大

ヨークベニマルの「強さ」を語るうえで、欠かせないのが総菜だ。100%子会社のライフフーズ(福島県/松崎久美社長)が運営する総菜売場は、多くの業界関係者の注目の的であり、カリスマコンサルタントの渥美俊一氏も高く評価していたことでも有名だ。なぜ、ヨークベニマルの総菜は強いのか。食品スーパーの総菜部門のコンサルティングに多数の実績を持つ総菜の専門家、小関恭司氏とともに店舗調査を実施し、強さの理由を探ってみた。※調査日:2020年11月3日、商品の価格はすべて税抜

売場解説

レンジアップなど冷蔵商品を拡充中?

 今回、調査した店舗は茨城県水戸市にある「ヨークベニマル水戸元吉田店」(以下、水戸元吉田店)だ。同店は2020年2月22日にオープンした比較的新しい大型店(売場面積2324㎡)で、ヨークベニマルの総菜売場における最新の取り組みが見られるため、調査対象に選んだ。

 大型ショッピングセンターの核店舗である同店では、広域商圏を念頭に置いた売場づくりを行っている。店舗周辺には幼稚園、小・中学校が複数あり、子育て世帯や単身世帯が多いこともあって、冷凍魚やミールキット、レンジアップの簡便商品といった若年層を意識した商品政策(MD)が売場の随所に見られる。

 ヨークベニマルの総菜売場の特徴は、「総菜の日配化」にあると私は見ている。近年の食品スーパー(SM)業界では、精肉や鮮魚部門で即食性の高い商品が提案される「生鮮の総菜化」が進んだ。これと同様に、最近は「総菜の日配化」が進んでいる。SMの中で最も利益性が高いとされる日配部門に倣い、総菜部門でも調理済みの冷蔵商品を拡大して最終利益を確保する取り組みだ。

 水戸元吉田店の総菜売場は、「総菜の日配化」の先駆的な事例といえる。一般に総菜売場の冷総菜といえば、198円前後のサラダやあえ物・煮物のパックが品揃えされている程度だ。ヨークベニマルでは冷総菜を増やすにあたり、こうした定番カテゴリーの拡充ではなく、新規カテゴリーを次々とつくり上げた。レンジアップするだけで完成するスープ類や冷蔵の米飯類などはその好例だ。新しいカテゴリーの導入により、これまでよりも単価の高い298~398円の商品が売れるようになり、これまで以上に利益が上がっているのではないだろうか。

 これまでのSMは“出来立て”の総菜を訴求してきた。しかし、結局のところ、お客は出来立ての総菜を持ち帰って温め直して食べるため、「最もおいしい状態」を享受できていなかったともいえる。その一方で、ヨークベニマルが導入した新カテゴリーの商品の多くは、レンジアップした状態が最もおいしくなるように開発されており、お客にとってもメリットがあるのだ。

什器内温度は「集中管理」

 水戸元吉田店の総菜売場には、種類が同じでも、日持ちする商品とそうでない商品がある。同売場はこの両方をうまく組み合わせている。

 たとえば、サラダ類のうちの「【健】自社製ぽてとサラダ」は加工日と消費期限が同日だが、グリーンサラダはそれよりも日持ちする。総菜部門の看板商品のひとつである「ぽてとサラダ」は敢えて日持ちがしない設計にしているため、練りサラダはこの1品に絞り込んでいる。調査日は、冷蔵ケース6尺に「大」「中」「小」「キッズサイズ」と容量別に4SKUを販売していた。

 スイーツにも注目だ。これは厳密には総菜部門の取り組みではないだろうが、総菜売場の近くでスイーツを販売するのはSM業界全体のトレンドとなっている。ヨークベニマルはこのトレンドをいち早く取り入れ、ロールケーキなどの冷凍スイーツをエンドで展開していた。

 冷蔵ケースを増やした分、温総菜の売場は大幅に縮小している。加えて、ケースの奥行を70cmに狭めた。すると、少量でも陳列にボリュームが出るうえ、出来立て感が訴求できる。インストア加工する商品を絞り込み、その代わりプロセスセンター(PC)の製造技術を磨き上げて品質を向上させ、商品の回転を上げる意図が窺える。

 もうひとつ、水戸元吉田店の総菜売場で特徴的なのは、アイランドタイプの什器を入口から見て縦ではなく、横方向に配置していることだ。その利点は、各アイランドにエンドがつくれる点にある。

 什器に関してもうひとつ取り上げたいのは従業員のオペレーションで、什器内の温度を定期的にチェックして回るのではなく、「集中管理」をしている点だ。店舗の総菜担当者には、商品づくり以外の作業が意外に多く、私が複数のSM企業で調査したところでは、平均で作業時間全体の45%にも及ぶ。器内温度の集中管理は、それらの作業をできるだけ省き、商品づくりに集中させるための方策のひとつだろう。

商品解説

ボリューム感と低価格を両立!

【健】天然だし香る狐豆いなり(5個入・298円)

 【健】(すこやか)とは、添加物に頼らず、オリジナルのレシピで店内仕上げした商品に冠するヨークベニマルの自社ブランドである。「健365 」とも表記される同ブランドの特徴は、「うま味調味料」「保存料」「合成着色料」などの添加物を自社工場と店内の厨房では使用していない点だ。

 「狐豆いなり」は、PCで炊いた油揚げに、店内での手作業でご飯を詰めている。硬めの皮を使わざるを得ない機械詰めと違い、同社のいなり寿司の皮は厚くてやわらかい。しかも、醤油の味を抑えて、だしをきかせている。このようにヨークベニマルは、PCを使って効率化する面と店内で手をかけて調理する面をうまく使い分けている。

❷【健】焼き味噌(梅干し入り) (160円)

【健】高菜(160円)

 おにぎりは、PCで製造した99円の商品から、インストアで調理した130円や160円の商品まで価格帯に幅がある。

 1個160円は高いように思うかも知れないが、1個当たり約150gとボリュームがあり、素材にもこだわっている。たとえば、「【健】焼き味噌(梅干し入り)」は「朴葉味噌」を使用しており、食べた瞬間に通常の焼き味噌おにぎりとは違う味わいが感じられる。「焼き味噌」も「高菜」も以前からの売れ筋である。

 おにぎりに限らず、ヨークベニマルは市場のプライスレンジよりもいちだん高い商品も扱っている。周辺地域のSMの弁当は398円が一般的だが、ヨークベニマルでは498円やそれ以上の価格の弁当も品揃えしている。

 298円の弁当も、498円の弁当も、つくる手間は同じだ。少し高くても買おうと思える商品にするには、高額であるほどコストパフォーマンスをよくすることが必要だ。その点でも、ヨークベニマルは「このボリュームでこのおいしさで、この値段」とお客が感じる商品開発を先行して実現している。

牛カルビ焼肉重(348円 ※特売価格)

牡蠣飯(258円)

 一般的に、総菜売場の弁当類は平たい容器で、“面”で見せる弁当がこれまでは多かった。しかし、持ち運びに不便であるうえ、大容量に見えることから女性客に不人気だった。こうした背景もあってか、近年のヨークベニマルは弁当容器の多くをコンパクトな形状のものに替えている。

 水戸元吉田店の総菜売場では「牛カルビ焼肉重」「牡蠣飯」のように、小さな容器の底にご飯を詰め、その上に具材を乗せる“上乗せ弁当”を豊富に揃えている。コンパクトな容器でボリューム感を出すには、既存の弁当と同量を詰め、上蓋と商品の隙間を1cm未満にすることがポイントである。同店の“上乗せ弁当”は、そうした盛り付けがすべての商品においてできていた。コンパクトな容器の“上乗せ弁当”は今後、SMの弁当のひとつのトレンドになると私はみている。

 「牛カルビ焼肉重」は348円という価格でありながら、肉をたっぷり使用し、ボリューム感あふれる商品となっている。ブランド牛を使用しているわけではないが、同弁当を買ったお客はコストパフォーマンスのよさを感じるはずだ。

【健】鶏もも唐揚げと彩り野菜の黒酢&黒米プレート(398円)

 レンジで加熱した時点が最もおいしくなるよう設計された弁当のひとつ。冷ケースで販売している同商品は、インストア加工した弁当に比べて日持ちがするのが特徴だ。コロナ禍の影響で「免疫力アップ」に関心が集まっている。根菜をたっぷりと使用した同商品はそうしたトレンドを意識して開発されたのかもしれない。

オムライス&ナポリタン(328円 ※特別価格)

野菜と食べる唐辛子ピリ辛トマトペンネ(298円)

 水戸元吉田店の来店客は若年層が多いためか、洋総菜が目立つ。洋総菜では定番商品に加えて、新しい売れ筋づくりに取り組んでいる様子だ。グラタン類やパスタ類がその好例である。調査日は冷蔵ケースのエンドで「オムライス&ナポリタン」「野菜と食べる唐辛子ピリ辛トマトペンネ」などをコーナー展開していた。パスタを使って原材料費を低く抑え、そしてPCで製造することで豊富なボリュームと低価格を両立している。

 パスタ類や弁当類のような、一品で食事が完結する“主食的調理品”は、コロナ禍で外食が減ったことから利用される機会が増えた。水戸元吉田店の総菜売場でも、“主食的調理品”のアイテム数が非常に多かった。

【健】自社製ぽてとサラダ(100g・98円 ※特売価格)

 ヨークベニマルの総菜の“顔”ともいえる「【健】自社製ぽてとサラダ」は、季節ごとに最適なジャガイモの品種を替えている。その素材の風味を生かすためにマヨネーズの使用量を控えめにしている印象だ。この品質で100g当たり98円は非常に安い。自社製だからなせることだ。

 グラム売りの「ぽてとサラダ」は前述のとおり、4サイズで販売されているが、各サイズの容量に“ぶれ”がない。「大サイズは〇グラム前後、中サイズは〇g前後」といった具合に規格に沿った量目でパック詰めすることは、当たり前にできるように思えるかもしれないが、教育が行き届いていないと徹底することは難しい。

【健】銀鮭の塩こうじ漬け焼き(1切・298円)

 ヨークベニマルの総菜には、弁当類を含め魚介類を用いた商品が少ない。「潮菜」というブランドで販売している魚総菜もSKU数はそれほど多くない。調査日の正午前後、焼魚は「銀鮭の塩こうじ漬け焼き」のみの扱いだった。塩焼きではなく塩こうじ漬けでグレードを上げているが、298円という価格であればもう少し身に厚みがほしいところだ。

⓫【健】海老クリームコロッケ(1個・180円)

 コロナ禍でSMの総菜売場は、揚物や焼き鳥を「ばら売り」から「パック売り」に切り替えた。その直後、大半のSMでは同カテゴリーの売上が落ち込んだが、最近は販売ノウハウが蓄積され、売上が上向いているチェーンも少なくない。もっとも、ヨークベニマルは元来、揚物や焼き鳥のばら売りをさほど強化していなかったため、他社ほどの打撃は受けなかったはずだ。

 揚物コーナーで販売する「【健】海老クリームコロッケ」は1個180円とSMのクリームコロッケとしては高額だ。しかし、バターの風味が際立つ同商品は、重量が120gはあると思われるボリューム感で、1個で夕食の主菜に十分なり得る商品だ。このように、クリームコロッケは本来、夕食の主菜に向いている商品であり、またそのように育成していきたい商品である。

 ヨークベニマルの総菜を、ヨークベニマルの総菜たらしめているのはPC機能を果たす子会社、ライフフーズの存在だ。グループ内にPC機能があるから、PCで効率的に製造する商品とインストアで手づくりする商品を見極めて魅力的でありながら“儲かる”総菜売場を実現することもできる。生産性と利益性を向上させるための「総菜の日配化」にもいち早く挑戦できる。ただし、PCがなくても「総菜の日配化」を実現することはできる。他SMにもぜひとも挑戦してもらいたい。

ヨークベニマル水戸元吉田店 店舗概要

営業時間 9:30~22:00
売場面積 2324㎡(703坪)
駐車場 694台(SC内)