破綻迫るアパレル企業の事業再生手法#6 贅肉をそぎ落とした企業が取り得る4つの競争戦略とは

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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取り得る競争戦略は4つ

 さて、これまでの話を振り返ってみたい。

 「一枚目」の要諦は、自社の衰退スピードにあわせ、現実を直視し固定費を大胆に下げる。これにより、コスト削減だけでブレークイーブンにもってゆくことだと説明した。そして、二枚目は、社内のオペレーションレベルを高め、組織に蔓延するムリ、ムダ、ムチャを排除。リーンでスピードある営業活動が可能になるようにQCD(品質、コスト、デリバリー) を最大化させると述べた。

 「オペレーション」と言い切ってはいるが、ここではライトオフ・ルールなどの会計制度からデジタル変革(DX)、つまり、ロボティクス、Product Lifecycle Management(PLM、製品ライフサイクル管理のこと)などのソリューション活用までも視野に入れるべきである。できれば、二枚目の段階で、営業利益率10%を目指すべきだ。

 勘の良い読者の方はお気づきと思うが、ほとんど全ての企業は、この段階までたどり着いていない。特に、組織が中太りし、船頭や評論家集団組織(利益を生まない企画組織)があちこちに存在し、社内で綱引きをやっているような企業・組織である。なおかつ忘れてはならないのは、この段階、つまり「二枚目」は、会社の固定費を軽くし社内のオペレーションのムダを派除しただけであるということだ。

 結局、企業は市場環境、競争環境のトレンドからは逃げられない。つまり、ドメスティック主体のビジネスを続ける限り、市場は縮小し高齢化が進み、グローバルSPAといった桁違いな物量と投下資金で圧倒的なコストリーダーシップポジションを取るユニクロなどのグローバルプレーヤーに競争負けすることには変わらない。「三枚目」は、3年の猶予期間の間に、大胆な発想とイノベーションを通し、縮小する市場の中で競争相手を圧倒し、また、成長をするための戦略が必要なのである。

 贅肉を極力までそぎ落とした企業が取り得る競争戦略は、論理的にいってその方向性は以下の4つしかない。

  1. まだ未開の地に打って出るか、衣料品以外の領域にMDを拡大するかのいずれかである
  2. 縮小する市場においては、物販以上に消費者の囲い込み(ブランド化)の方が重要
  3. 巨大企業に勝つため、あちこちに手を出すのでなく自社が本当に強い領域に集中する
  4. 縮小する市場で売上を上げる最も確実な方法はM&A

 の4つとなる。それぞれ解説していきたい。

 

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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