破綻が迫るアパレル企業の事業再生手法#6 贅肉をそぎ落とした企業が取り得る4つの競争戦略とは

2020/09/22 05:55
河合 拓

新型コロナウイルス感染症(コロナ)の拡大の長期化に伴う経済の低迷により、これから事業再生、企業再生は避けられないテーマとなる。そこで私が独自に体得した「企業再建の手法」を解説する本稿もこれで第6回目。「オペレーション改革」まで解説が終わったところで、改めて注意しておきたい点を、今のアパレル企業が置かれている状況を鑑みながら述べるとともに、いよいよ「三枚目」、贅肉を極力までそぎ落とした企業が取り得る競争戦略について話を進めていきたい。

BiancaGrueneberg / istock
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このご時世に「売上5億円上積み増せ」と怒鳴る部長

 今、商社では大変なことがおきている。アパレルに無事、売れもしない春夏商品をぶち込んで売上を確保した商社だが、今度はアパレル企業が秋冬物の仕入れ量を半分に減らしたからだ。アパレル企業の調達金額が半分になれば商社の売上も半分になる。冬は新型コロナウイルスが猛威を振るう季節とあって、どのアパレルも仕入を絞り出したのだ。

 結果、「第3四半期の売上予測は過去最低となり、大赤字になる」とある商社から私は相談を受けた。

 この会社はこのお盆休みは本社に対して、各事業部が事業戦略をプレゼンする期間だったようだが、判で押したようにそのテーマとして「デジタル化」をあげている。だが、なぜ、「デジタル化」をすれば、売上があがる、あるいは、利益が出るのか、合理的な説明はない。当たり前である。デジタルを導入するなら、それに見合った、いや、それ以上の人員削減をせねばコスト削減にはならないからだ(デジタル投資の分、減価償却費が増えるため)。

 したがって、どのように計算しても全員を養ってゆける事業計画など書けない。そこで、出た号令が「とりあえず、全員、5億円ほど売上を積み増しておけ」である。これは実話だ。

 古い教科書には、「商社を外して長い流通を短縮化すればコストは大きく下がる」と書かれている。だが、実際に原価率は下がらない。理由は簡単だ。商品付加価値を上げず、コスト削減ばかりやっているのだから、値引き販売しなければ売れないためだ。値引き販売をすれば上代は下がる。上代が下がれば、いくら原価が下がっても相対的に売上高原価率は上がるのである。

 その上、商社をはずしたおかげで、アパレル企業はファイナンス機能を失う。そうなると、銀行借り入れは与信を超えるほどになり、あと数ヶ月で恐ろしいことが起きるだろう。これが、水面下で起きている実態なのだ。

 昨日も、あるテレビ番組から「アパレル企業の在庫問題について取材をお願いしたい」と頼まれ、私は、「もはやアパレル業界は、そんなレベルの話を議論するほど余裕はない。産業が消えてゆくかもしれない状況に陥っているのだ」ということを説明したのだが、そのメディアの方達は驚いていた。昨年の消費増税、暖冬、DXへの過剰投資というカウンターの三連発で、すでに死に体となっていたアパレル産業だが、コロナ禍によりこれらの乱脈経営が見えにくくなり、結果として銀行からの過剰融資を引き出すことができたわけだが、これもあと数ヶ月だろう。今、金融の世界では半身不随のアパレル企業、商社が舞い込んできている。

 前置きが長くなったが、私があえて企業再建の手法を数回にわたって解説しているのは、こうした背景があるからだ。

 この論考が世に出るころには、資金繰りに苦しむアパレル小売企業が山のようにでてくることだろう。そして、新型コロナウイルス感染症のワクチンが開発されない限り、レナウンに続く倒産件数は加速度的に増えるだろう。その余波は、アパレル企業だけでなく、バリューチェーン全体におよび、次に餌食になるのは繊維商社だと私は見ている。

 

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