ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営5 「集まれない社会」到来で果たすSCの新たな役割と機能
増加するSCの空床 埋めるのは従来と同じテナントではない
では、このオンライン文化がSC経営(運営)にどのようなインパクトをもたらすのか、そしてそれは正なのか負なのか、話を移していこう。
この連載の2回目で日本の人口問題を減少と構造の2つの面で解説したが、今後、SC経営の継続のためにはこの人口構造の変化に対応する必要がある。
その対応とは、ナショナルチェーン中心のテナント構成と売上連動型賃料による収益構造の崩壊への対応である。
セシルマクビー、オゾック、ハッシュアッシュ、23区HOMMEなど次々とブランド閉鎖(休止)が発表されるが、今後も多くのナショナルチェーンのブランド閉鎖が出てくるだろう。
これは人口増加に伴い世代別や感性別にセグメントしたターゲットに合わせて作られたブランドが、人口減少によってそのターゲットが減少し、ブランドを維持できなくなったことがその原因であり、コロナ禍はきっかけでしか無い。
したがって、SCは相当の好立地に無い限り、ますます空床が増加することは免れないが、この対処方法はこれまで考えていなかったテナントリストに変更するしかないのだ。
昔は無かった携帯ショップや保険の相談窓口などが当たり前のようにSCに出店しているように時代によって変わっていくのである。
オンライン文化で変わるショッピングセンター経営
ここまで説明すれば概ね結論は見えてくると思うが、SCと呼ばれる建物はショッピングをする場所だけでは無くなる。
住宅立地であれば在宅ワークの補完サポート機能、地方であれば大学や予備校や塾の補完機能、ウーバーイーツなどと連携した食卓機能、ECで買った商品の受け取り、ショールーミングなどを強化することを求められる。
もちろん、買い物の場所であることは変わりない。実物を見て買いたいお客さまはいるし、買い物は楽しいし外食だってしたい。
ただ、これまでの人口増加に合わせた売上増加から賃料収受するビジネスは残念ながら終息に向かうだろう。
複数保有するSC企業はオンラインの機能や新しいテクノロジーを使って新たなビジネスにもチャレンジ出来るだろう。
自ら学校や予備校を作るか提携するか、それによりシSCを「学ぶ場」にすることも出来るし、オンラインの仕組みではしっかりとした講師さえ確保できれば録画や撮影などどこでも構わない。佐世保から放映するジャパネットたかたがそれを体現する。なぜ、それをSC企業が出来ないのか。
ゴーストキッチンは客席を持たない飲食店だが、逆にキッチンを持たない飲食店も可能だろう。とにかく売上連想型賃料に縛られている限り、店舗巡回や接客指導やロープレなどアナログな活動を続けていくしかないのだ
これまで消費者に映像を届けるためには相当の設備と仕組みが必要だったものが、WEBカメラとZOOMがあれば今すぐにでも映像を配信することができる。
お店の店長が着こなしをインスタにアップしていたのと同じように店舗から動画を配信し、そこからECへ誘導することは可能だし、告知も、Twitter、Facebook、LINE、Linkedinなど多くのSNSなら低廉な価格で即座に行える。
ところが、今のSCの仕組みは店舗売上から賃料を収受するために「ECの受け取り場にはしてはいけない」「店舗で自社ECサイトを案内してはいけない」とテナントを縛る前近代的なことを未だ続けているSCは多い。
そんなことを続けていたら誰もSCに来なくなる。そろそろ50年前に作られたSCビジネスモデルから離れてはどうだろうか。
西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役
東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員、渋谷109鹿児島など新規開発を担当。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒、1961年生まれ。
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