ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営3〜これからのショッピングセンタービジネスモデル〜
問題の所在を間違えるショッピングセンター事業者
「売上が落ちると困る」とショッピングセンター事業者は口を揃えて言う。だが、そうではないのだ。「売上が落ちると困る”ことが困る“」のである。
要するに問題は「売上が落ちること」では無く、売上が落ちることで経営の足元が揺らぐ、その体質が問題なのだ。
しかし、売上が落ちると困るとばかりに、販促、店舗巡回、営業指導、スタッフ研修、フロア担当強化、接客ロープレ、スタッフ懇親会と50年間変わらないアナログ、かつ労働集約的な施策を繰り返し、運営現場では前途有望な若者達の時間をこのようなことに日々費やしている。
この先、10年、20年、この仕事を続けた若者達は、今後、
少し話が横道に逸れたが、要するに売上が落ちることを問題視するのではなく、「売上が落ちても困らないビジネスに変わる」しか無いのである。
そうでないと人口減少、少子化、高齢化、ECの伸長、人出不足、気候変動による自然災害、これらを乗り越えることは到底したいできないばかりか、少ない働き手の成長を阻むことにもなりかねない。
今、必要なのは現実を受け止めること

これから起こる事象のすべては、あらゆるビジネスに影響を及ぼす。決してショッピングセンター事業に限ったことでは無い。すべてのビジネスがあまねく影響を受ける。
では、どうしたら良いのか。これには大きく2つの前提が必要である。
1つ目は、今起こっていることを認めることだ。たとえば、毎年起こる豪雨被害を異常気象と言っている限り、それを認めていない証拠である。
「今年は暖冬で服が売れない」、この言葉も何年聞いたことだろう。だが、日本では過去100年で平均気温が1.24度上昇し、温暖化は止まることは無い。これは、現実のことなのだ。
暖冬だけではない。働き方が変わり通勤着はカジュアル化し、非正規労働者の増加で国民の平均年収は下がり、デジタル変革が遅れるアナログ企業は衰退していく。
今後は在宅ワークでオフィスが不要になり、コロナ禍によって集客イベントや展示会などは縮小しオンラインに移り、接触回避のためキャッシュレス化は進む。すべて現実なのである。
2つ目は、この現実をスタートライン(出発点)にすることだ。「そんなはずじゃない、昔はこうだった、できたはずだ」、こういった主張は明らかに過去を引きずっているからに他ならない。
新入社員に「先輩から仕事を教わって早く戦力となれるよう頑張ってくれたまえ」と訓示するのは、これまでと同じ仕事が続くことを前提にしている。
同じ仕事が続けば先輩から作法を習ってその通りに動き、改善の繰り返しと業務効率を上げることで利益が出せた。
しかし、今は違う。前号で指摘したが生まれてくる子供の数は3分の1になっているのだ。そして、この先、10年後を誰が予測できるだろうか。
だからこそ、この2つがすべての基本になるのである。
前の記事
ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営2〜揺らぐビジネスモデル、「テナント売上依存」の限界〜

ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営5 「集まれない社会」到来で果たすSCの新たな役割と機能
商業施設の価値を再定義する「西山貴仁のショッピングセンター経営」 の新着記事
-
2025/12/01
第128回 少子高齢化時代におけるショッピングセンターのターゲット設定 -
2025/11/18
第127回 ショッピングセンターが「フロア収支」を採用しない理由 -
2025/10/31
第126回 SC運営の成否を決める顧客の滞在時間 “装置産業”としての役割とは何か -
2025/10/17
第125回 「駅ビル」が抱えるリスクを百貨店の歴史から考える -
2025/10/03
第124回 相次ぐフードホールの開業 日本で成功するためのカギとは -
2025/09/19
第123回 「営業時間統一」という常識打破に向け、SCに求められる対応とは
この連載の一覧はこちら [128記事]



