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彷徨うコンビニその10 コンビニ各社を襲うコロナショック

新型コロナウイルスの感染拡大が収束した後、コンビニエンスストア各社はどう動くのか。政府の緊急事態宣言を受け、外出を自粛する消費者が増えた影響がコンビニを直撃している。4月に入ってから、繁華街や駅前、オフィス街は閑散としており、そうした立地にあるコンビニ店舗の売上高の落ち込みは激しい。こうした状況下、コンビニ本部は何を考え、どう行動しようとしているのか――。

3月は「軽傷」、だが4月は……

 「3月は5%程度(のマイナス)で止まったが、4月以降はもっと大きなインパクトがある」

 そう話すのはローソン(東京都)の竹増貞信社長だ。

 大手各社が公表した3月の既存店売上高は、セブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)が対前年同月比3.2%減、ファミリーマート(東京都)が同7.6%減、ローソンが同5.2%減と軒並み前年同月実績を下回っている。ただ、外出自粛やインバウンドの激減で大打撃を受けている百貨店やアパレル専門店と比べれば“軽傷”で済んでおり、「消費者に最も近い小売店」としての強みを発揮している。

 しかし、4月は3月を上回る相当な打撃を被っていることが予想される。直近の決算説明会において、各社の経営トップは、

 「立地別では住宅立地にある店舗は伸びているが、事業所(のあるところ)や駅ナカの店舗は下がっている」(セブン&アイ・ホールディングス井阪隆一社長)

 「住宅地や郊外型店舗は数字を出せているが、空港にある店舗などは影響を受けている」(ファミリーマート澤田貴司社長)

 と述べており、立地によって売上高の格差が大きくなっている状況だ。

 また、需要が見込めないとのことから、休業を余儀なくされている店もある。ファミリーマートは194店(4月14日現在)を休業中とのことで、コンビニ各社の4月の既存店売上高は惨憺たる結果になるとみられる。

 追い打ちをかけるように、コロナウイルスの感染拡大の影響が1~2年先まで長引くのではないかという予測がここにきて出始めている。コンビニ業界は今後、予想される「ニューノーマル(新日常)」と向き合なければならない。

コロナショック下の出店戦略は

 出店についてはどうか。コロナショックの以前から、コンビニの出店競争の潮目は変わりつつある。

 大手3チェーンはこれまで年間1000~1500店のペースで店舗網を拡大してきたが、ここ数年の各社の出店は抑制気味だ。大手3チェーンは新規出店の計画数値を発表していないが、セブン-イレブンは743店の新規出店に対し、閉店・移転が703店と、店舗純増数は43店にとどまった(20年2月期実績、セブン-イレブン沖縄を除く)。ファミリーマートも173店の増加にとどまり、ローソンに至っては国内グループ店含めた総店舗数は215店の純減となっている。

 ファミリーマートの澤田社長は、今期の出店について、「具体的な計画数値は定めず、現在の店舗の規模を維持する程度の出店を見込む」と述べている。新型コロナウイルスの感染拡大の影響が未知数であるなかで、出店に関して慎重論が多く、必然的に既存店の拡充に動かざるを得ない。

「コンビニ店舗の拠点化」は進むか?

 セブン&アイの井阪社長は、決算説明会の席上で「(リモートワークの拡大もあり)ネット通販が強くなっている」と発言している。イトーヨーカ堂(東京都)のネットスーパーの受け取りロッカーをセブン-イレブン(東京都)の都内2店に設置し始めるなど、今後グループをあげて、コンビニ店舗の「ラストワンマイルを埋める拠点化」を進める可能性も示唆している。

 ローソンも、都内14店舗展開している食事宅配サービス「ウーバーイーツ」を、東京、大阪など500店に拡大する計画を打ち出している。コロナショックによって、リモートワーク・在宅勤務が定着しつつあるなか、コンビニ店舗の拠点化をめざす動きは強まるとみられる。

 一方、ファミリーマートは、こうした“飛び道具”の可能性に言及していない。その代わり、営業が継続できないフランチャイズ店舗を直営化し、収益力を強化してから再フランチャイズ化するといった既存店のテコ入れ策を発表。また、店舗運営指導にあたる「スーパーバイザー」を店舗の近くに居住させ、FC店のケアを強化する体制を打ち出すなど加盟店ケアに余念がない。

 2011年の東日本大震災の際は、生活インフラとしての重要性を強烈に示したコンビニ各社。コロナショック下でコンビニはどのような役割を果たすのか。期待が集まっている。