中堅コンビニチェーンが苦境に立たされている中、ポプラ(広島県)は独自の道を模索し始めている。ローソン(東京都)と資本業務提携を結んで以降、ローソンの知名度を活用したダブルネーム店舗「ローソン・ポプラ」を展開すると同時に、病院や官公庁の中などコンビニの隙間市場を深耕しようとしている同社。さらに、フランチャイズ契約の条件を緩和し営業時間の自由度を高めるなど、加盟店オーナーのつなぎ止めにも力を入れる。ただ、ポプラがローソン傘下である以上、自主性を確保できるかどうかはこれらの戦略が奏功し、業績を向上できるかどうかにかかっている。
自主性を維持するには……
ポプラの看板商品といえば、「ポプ弁」だ。店内で炊いたご飯をその場で盛り付ける同商品は、とくに働き盛りの男性客から絶大な支持を集めている。
コンビニの弁当はレンジアップが主流。炊きたてのご飯のおいしさを訴求できるポプ弁は、ポプラにとって強烈な差別化要素となっていた。
こうした独自性の高い商品を武器に独自路線を歩んできたポプラだが、コンビニ大手3チェーンの怒涛の出店攻勢に巻き込まれ、次第に業績が悪化。2014年にはローソンと提携するに至っている。
コンビニはいわゆる“装置産業”であり、成長のためには情報や物流などに投資し続けなければならない。多額の投資を継続していくため、大手チェーンの傘下に入る道を選んだというわけだ。
今やローソンはポプラ株式18.24%を握る大株主となっている。ローソンの傘下に入った以上、企業の独立性を維持するには低迷している業績を早急に回復させることが必須だ。仮に改善の兆しが見えなければ、ローソンとしてはポプラの経営に注文をつけざるを得ない。
ポプラが狙う「マイクロマーケット」
では、ポプラは低迷する業績をどのようにして改善しようとしているのか。カギを握るのは、ポプラが目下進めるニッチ市場、閉鎖市場の開拓、そして加盟店の協力関係の強化だ。
ポプラでは髙島屋グループだったコンビニチェーン「生活彩家」を買収、自社のブランドの1つとして展開している。近年のポプラは、病院の中にこの生活彩家を積極出店している。
現在の病院内の店舗数は約80店舗。コーヒーや弁当、おにぎりのほか、病院側の要望による医療関連の雑貨や、見舞客のニーズに応える商品を揃えるなど、病院内店舗のノウハウが蓄積されつつあるとのことで、一定の成果が見られつつある。
またポプラは、生活彩家だけでなく、「ポプラ」の屋号でも工場や物流施設、官公庁、ホテルといった特殊立地、閉鎖商圏への出店を進めている。コンビニ飽和が囁かれる中、大手チェーンに先回りするように、こうした「マイクロマーケット」へ出店するポプラ。この成長戦略が、吉と出るか凶と出るかはまだ誰にもわからない。
早期から加盟店支援策を実施
こうした出店政策と並行して取り組んでいるのが、フランチャイズ(FC)加盟者に対する支援だ。
流通業界全体で人手不足が深刻になり、セブン-イレブン・ジャパンの一部加盟店が“反乱”を起こし、「24時間営業問題」が社会問題となったのは記憶に新しい。その一方、一連の問題が明るみに出るはるか以前の15年2月期から、ポプラは24時間営業の見直しを進めている。
15年2月期における加盟店の24時間営業店の比率は42.3%。19年2月期には、これが18.9%まで下がっている。加盟店運営の自由度を高め、負担の少ない運営形態を模索しているのだ。
さらにポプラでは19年3月下旬から、弁当やおむすびの値引き販売の推奨しはじめている。19年8月末には、セミセルフレジへの切り替えを完了するなど、「加盟店ファースト」のスタンスを鮮明にしている。
ポプラは19年5月に、共同出資の合弁会社ローソン山陰の株式をローソンに売却している(ローソン山陰は20年3月にローソンが吸収合併)。これにより、ポプラは13億9600万円の特別利益を計上。20年2月期業績予想では、当期純利益11億円で着地するとしている(前期は21億円の当期赤字)。
ただ、本業の儲けを示す営業利益は赤字を見込んでおり、ローソン頼みの厳しい経営が続く。大手3社による寡占状態が強まるコンビニ業界。4位以下の苦境は深まる一方だ。漂う閉塞感をポプラは打破できるか。正念場を迎えている。