博報堂がスモールビジネスに熱視線 「食」のマーケットプレイスを展開するねらい
リアル商談会が新商品開発のきっかけに

博報堂のメーン事業は言うまでもなく広告業であり、大手企業を中心とするマーケティング支援だ。一方、ミライデザイン事業ユニットでは事業そのものを手掛ける。社会課題の解決とビジネスを両立させるスタンスで新規事業開発に挑み、中小規模の事業者も対象に、eコマース、地方創生、ウェルビーイングといった観点で新しいビジネスの創造に挑んでいる。
「小規模事業者が集まってコミュニティを形成し、つながりを作って商売をしていく流れもあり、ポテンシャルを感じている。成長可能性があれば、新しい領域の市場を探って流れをつかむべきだろう。経済合理性では大手にかなわないかもしれないが、ロングテール型プラットフォームで成功したマーケティング支援の事例もある」(飯沼氏)
取扱商品はFOOD&COMPANYが独自に設けるガイドライン「F.L.O.S.S.」に基づき、FRESH(フレッシュ)、LOCAL(ローカル)、ORGANIC(オーガニック)、SEASONAL(シーズナブル)、SUSTAINABLE(サステナブル)の要素をチェックしつつ、生産者との対話を通じて人柄や考え方を理解し、実際に食べてみて納得できたもの。大企業のように潤沢にコストを掛けられる会社は多くないため、成果報酬型のレベニューシェアでもマーケティングを支援する。飯沼氏は「新規事業で特に大切なのは取り組む側のモチベーション。担当メンバーのやる気が成否を分ける」と話す。
山下氏は2018年に博報堂グループを横断する社内公募ベンチャー制度に応募して採用され、当時のメンターが飯沼氏だったという。産休・育休を経て職場復帰し、2024年にミライデザイン事業ユニットに加わった。

初めて開催された「Neighbors Food Market」のリアル商談会では、出展ブースが隣同士になった生産者が意気投合。新しい商品の開発につながった。それが、石川県のコメ生産者「山燕庵(さんえんあん)」と山形県のクラフトジェラートメーカー「CUP de GOEN made by gelato en.(ジェラート エン)」が手掛けた「お米でできたクラフトアイス“ら・アイス”」だ。わかりやすく言えば「甘酒のアイス」だが、発売に向けてネーミングとデザインを提案するなど、山下氏がプロモーションに長年携わってきたキャリアを活かしてサポートした。
「甘酒ではなく『お米』としたほうが興味を持たれ、子どもへの安心感や植物性のヘルシーなイメージが抱け、素材のよさを伝えられる。クリエイティブな視点では事業者の規模に関係なく、博報堂ならではの提案ができ、付加価値を提供できる。新鮮な響きの商品名で『お客さまに売りやすい』と喜んでもらえた」(山下氏)
生産者同士のコラボレーションで生まれた、この“ら・アイス”は「Neighbors Food Market」のサイトで取り扱われることはもちろん、FOOD&COMPANYの店舗で販売。目に留まり興味を持ったバイヤーから海外市場で大々的に展開したいというオファーがあり、現在はその準備も行っている。





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