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低価格メガネチェーン全盛時代に パリミキがハイブランド勝負で大幅増益の理由

2025/04/14 05:35
小内 三奈
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国内に612店舗を展開するメガネチェーンのパリミキ(東京都)。2024年3月期の売上高は前年比105.3%の499億1200万円、営業利益は前年比263.4%の19億2800万円と増収増益だった。安さと気軽さを前面に打ち出し利便性の高い立地に出店を続けるメガネチェーンが台頭する中、同社が大きく業績を回復させているのはなぜなのか。同社代表取締役社長の恒吉裕司氏に話を聞いた。

パリミキは高くない !?

阪急メンズ東京 EYE WEAR by PARIS MIKI

 メガネが必要な人にとって自分に合った眼鏡は生活に欠かせないものであり、さらに生涯にわたって買い替えやメンテナンスなども必要となる生活必需品だ。しかし、若い世代を中心に、安くて手軽なメガネチェーン店を利用する人は多いだろう。一方、老舗のパリミキといえば、熟練のスタッフが時間をかけて接客してくれる高級店、値段もやや高めというイメージではないだろうか。だが、価格面において実態は違うようだ。

 恒吉氏によると「パリミキの通常メガネフレーム・レンズ込みスタート価格は1万3200円。1万円は超えるが、レンズ込みの値段で遠近両用レンズもこの価格。安さを前面に打ち出しているチェーン店で遠近両用メガネをつくるときにも同程度の価格になる」という。

 実際、ZoffやJINSといったメガネチェーンの料金体系では、遠近両用レンズは追加料金。あくまでも近視用メガネに照準を合わせて低価格を打ち出し、利便性の高い場所に出店を続けている。これに対して、パリミキは遠近両用メガネが必要となる50歳前後をメーンターゲットに据えることから、あえて遠近両用メガネを標準とした価格設定で勝負する。

 「店舗の場所によって異なるが、全体のメーン顧客層は50代以降の世代が中心。なかでも、遠近両用メガネを初めて手にする50歳前後は重要なお客さまと捉えている。遠近両用メガネは1つの小さなレンズの中で遠く、中間、近くを調整するので、ほんのわずかに焦点がずれるだけで見づらく、疲れにつながる。近視用メガネと比べてより繊細な調整が必要となる」(恒吉氏)

パリミキ測定
パーソナルディレクションでは、測定した目の調節力がわかるよう、見える範囲を作成して渡している

 パリミキがカウンセリングに時間をかけ、個々人に最も合った見え方、眼鏡を提案するスタイルを貫く理由はここにある。2024年秋からは「眼を救え!」と銘打ったキャンペーンを打ち出し、一人ひとりに合わせた「パーソナルディレクション」(自社独自の視力カウンセリングシステムで、ライフスタイルに合わせた最適な視界を提案すること)の必要性を伝える取り組みも進めている。

 一方で、抜群の立地と安さが売りのチェーン店に対抗するのは容易ではない。そこで、22年に社長に就任した恒吉氏が打ち出した抜本的な改革が、グローバルスタンダードとなっている顧客ロイヤルティの指標・NPS(ネット・プロモーター・スコア)を活用した感動体験の徹底だ。

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