ワールドが三菱商事ファッション買収!進むアパレル垂直統合、2つの課題とは
垂直統合で理想的なオンワードの事例
垂直統合で理想的な例だと私が考えているのは、オンワードとサンマリノである。まず、彼らは大連に個人対応可能なハイテク工場を4つも持っている。つまり、サンマリノに出資をする前から個人別対応は可能だった。
さらに、私の推定ではあるが約50%のニットをサンマリノにいれている一方、サンマリノもオンワードのやり方を十分熟知している。シナジー創出にあたっていきなり「デジタルSPA」(素材調達、物流配送、工場稼働など重複機能をデジタル統合するプラットフォーム)を狙うのでなく、まずは人材交流からはじめた点もポイントだ。サンマリノの人員にオンワードのMDを、オンワードのMDにサンマリノの商社機能を学ばせるため、人員を段階的にミックスしてきたのである。
確かに、ユニクロの有明プロジェクトのように同じフロアに企画、生産、販売を一緒にする方法もなくはない。私も、オンワードのオフィスに幾度かお邪魔したが、ミニ有明プロジェクトのように自由に席を移動でき、企画、生産、販売が自由にプロジェクト形式で動くことができる。
商社の中には、こういう同社の動きに対して「混乱している」「うまくいっていない」などと酷評する人もいるが、こういった人材面の融合は時間がかかるのが常であり、一人ひとりが大きな変化の真っただ中でもがきながら徐々にプロセスが固まってゆくものだ。
私は、オンワードのやり方こそ他のアパレルが研究すべきことだと思う。
今後、ファンドや海外アパレルの「日本買い」は私が予言した通り、今後加速してゆくだろう。日本の川中、川上は日本から完全に撤退したといえ、全体の99%は「オフショア・ビジネス」になっている。川下は、アジアの中でも独特なポジショニングをやっている宝だ。これをシニカルな批判で潰してしまうのはあまりにもったいない。
とくに、ユニクロが「ベーシックアイテム」に注力しているいま、ファッション性で勝負できるのは、「ユニクロ以外のアパレル」だ。今回の垂直統合を、日本のアパレルの最後の復活の手段とみて、応援していきたいと思っている。
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プロフィール
株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。
著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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