ユニクロ、開始から7年で明らかになった有明プロジェクトのいまとすごい成果

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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「有明プロジェクト」の意外な成果と野心

「LifeWear=新しい産業」説明会の資料より抜粋
「LifeWear=新しい産業」説明会の資料より抜粋

 この発表を受けて、登壇したのが、ファーストリテイリンググループ執行役員・田中大氏で、「有明プロジェクト」に焦点をあて同社の事業成長とサステナビリティの連動の成果を説明した。

 さてこの「有明プロジェクト」。178月期に始動し当初は話題を集めたものの、その後はあまり表面に出てこず、忘れてしまった人も大勢いるかもしれない。私の理解によれば、この「有明プロジェクト」とは、企画・生産・販売の3つの機能を一つの建物に設置し、組織間の壁やコミュニケーションの悪さを解消し、消費者が必要とするものを無駄なくつくり無駄なく届ける、というものだと思っていた。

 他にも付随的な目的はたくさんあろうが、一般的にアパレルのサプライチェーンはプロトコルが統一されておらず、「言った、言わない」が繰り返され、ミス、ロス、やり直しが頻繁に発生する。物理的な距離とコミュニケーションロスが正の相関性をもっていることは現場の人間なら誰でも分かるだろう。これが解消された某社に勤める私の友人たちも「初めてお客様の顔が見えてきた」「自分の仕事が他部署でどうなっているのか理解できた」と前向きな発言を多くしていた。

 この有明プロジェクトは、皮肉にもこのプロジェクト全体がコミュニケーションロスに覆われ、苦労もつきなかったという話をかつて関係者から聞いた。しかし、プロジェクトとはそういうものだし、きっと難関を乗り切って、無駄なものを「作らない」「運ばない」「売らない」を実現していくだろう。

 ただプレゼンテーションについて希望を言わせてもらえば、やや抽象度が高く感じられたので「具体的に何をするのか」「(それは」どういうメカニズムで問題解決するのか)という部分を掘り下げて説明していただけていたらより理解が進むと感じた。あるいはその核心をあえて明かさなかったのかもしれない。

 その中で、私が注目したキーワードが2つある。「お客様起点」と「生産リードタイム」である。

 企画、生産、販売の人員が一つのサイトに集合し、お客から収集された声をデータベース化・見える化し、素早い追加生産、確度の高い初期投入などに生かすという意味だろう。これはモデルとしては、ターンアラウンド・スペシャリストである三枝匡氏の「創って・作って・売るを顧客起点で高速回転で回す」という再生手法に酷似しているが、一つ大きな違いがある。

 三枝氏は、その著書で幾度も「スモール・イズ・ビューティフル」と書き、「小さな組織」を推奨していた。だが「有明プロジェクト」は大規模な人員が関わる大プロジェクトである。このような大規模組織でも、果たして「顧客起点の高速回転」が機能するのかは、私はやや疑問である。また、「生産リードタイムを短くする」ということだが、「どうやってやるのか」については説明がなく、もう少し深堀りした説明をしてもらえると嬉しかった。

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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