ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
ザ・ノース・フェイスと関係の深い
韓国YOUNGONEでの経験
実は、私は今から7~8年ほど前になるが、毎週のように韓国に出向き半年続いて、韓国のアウトドア用品、ウェア大手であるYOUNGONE(ヤングワン)という会社のプロジェクトリーダーをしていた経験がある。古い話なのでもう事情が変わっている可能性は大いにあるが、当時の韓国はほとんどがFC (フランチャイズ)で、このYOUNGONEが韓国のザ・ノース・フェイスの(一部の)ライセンスホルダーだった。手前味噌だが、当時、私がいたカートサーモンの調査は非常に高く評価され、その後、YOUNGONEから別のコンサルティングの依頼を受けたほどだった。
なぜ、YOUNGONEの話を持ち出したのかというと、まさにザ・ノース・フェイスのライセンスの問題である。古い話なので正確な記憶ではないが、エリアごとにライセンスが分かれれており、中々調査が思うとおりに進まなかった。私は各種小さいヒントから大きな仮説を導き、それを一つずつ確認してExternal due diligence (外部からの情報だけで当該企業の内部査察を行うプロフェッショナルな仕事術。大変な経験と人脈がなければ成功しない)を行っていった。その報告書は先方の役員に高く評価され、仕事が終わった後に、来日した会長から、渋谷のマークシティ内のホテルで新しい仕事の話をいただいた。
丁度そのころ、日本のゴールドウイン社は、プライベートブランドのゴールドウインを立ち上げていた。私の完全な憶測だが、当時のゴールドウイン社幹部の心情を言うなら、「ザ・ノース・フェイスはどんどんメガブランドに成長し、日本だけで動かすわけには行かず、とくに中国や東南アジアなど、これからの成長市場で自由にビジネスができない。だから、ライセンスが複雑なザ・ノース・フェイスよりも、自分達の自由になるメガスポーツブランドをいち早く作り上げなければならない」というものであったのではないだろうか。
ライセンスによる“擦った揉んだ”で、記憶に新しいのは三陽商会とバーバリーである。業界全体でみると、ライセンスについては伊藤忠商事は非常にうまくコントロールしているが、ゴールドウイン社の場合は、三井物産と身も心もがっぷりつながっている。ザ・ノース・フェイスのライセンスは日本と韓国に限られるからこの成長余地には限界があり、三井物産の協力の元、「ゴールドウイン」ブランドを思いっきり中国を軸に海外に拡大させたいということではないだろうか。なお、韓国ではYOUNGONEと合弁会社を設立し、ゴールドウインの販売を強化していく方針だ。
ゴールドウインのビジネスに欠かせない
韓国アパレルの特徴とは
さて、ゴールドウイン社のビジネスにおいて重要な韓国アパレルの状況について少しふれておきたい。
その前に知っておきたいことが、確実に私の予言「外資の日本買いが始まる」が動きだしているということだ。
ここ最近、私の元には、海外アパレルの日本市場参入に関する講演依頼が多く舞い込んでいる。来週は、全員海外の人で、世界のアナリストを相手に、日本市場について語るのだが、講演は30分でQ&Aが1時間もある。つまり、ディスカッションに時間を割きたいということなのだ。また、先週は、16社の中国のアパレル企業相手に日本市場の分析とユニクロやシーインのビジネスモデルについて語ったばかりだ。
話を韓国アパレルに戻そう。私は10年以上前から韓国を「要注意国」にしていた。韓国は前述のとおり通販が非常に流行っているのだが、リアル店舗はほとんどがFC (フランチャイズ)形式で、オーナーの気が変わると、アパレル店がいきなりチキン屋やコーヒーショップに変わってしまうのだ。
また、私は韓国でフォーカスグループインタビューをやったのだが、国民が好きな色合いは派手な原色が多く、ザ・ノース・フェイスでも派手な紫や赤、黄色などがミックスしたような服が流行っており、日本で流行の商品をもってゆくと、「日本の服はみんな無印良品だ。色にバリエーションがない」といわれたものだ。
韓国でアパレルが勝つためのとっておきの戦略を教えたい。それは極めてシンプルで、「韓国で勝つためにはロッテに行け」だ。韓国ではスーパーマーケット、ショッピングモール、百貨店、ECなどの流通はみな財閥が掌握している。だから、ロッテ(あるいは他の財閥)のキーパーソンを押さえれば、ほとんど全ての流通を確保できるわけだ。「ごちゃごちゃ考えるな、これがリアルビジネスだ」と韓国オフィスの友人は私に笑いながら語った。
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プロフィール
株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。
著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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