ワークマン撤退でも譲らない 楽天市場が送料無料化にこだわるのはなぜか?
出店者へのサポート強化
この制度により無料になった送料は出店者が負担することになるため、一部の出店者からは反対の声が上がっている。これに対し、お客にとっての分かりやすさ、使いやすさを向上させることで楽天市場の利用率が高まるため、中長期的には各店舗の売上は増加すると楽天は見ており、出店者側にもメリットがあるものだと主張している。
楽天の調査によると、約68%の消費者が送料が原因で商品の購入を諦めたことがあるという。「送料無料ラインが統一すれば購入を諦めるお客さまが減る。(楽天市場に出店している)5万店舗が多様性を維持しながら買いやすいサイトをつくらなければ、持続的な成長はできない」と三木谷氏は送料体系の統一について理解を求めた。アマゾンのような巨大ECに対抗するには、料金体系が統一されたプラットフォームが必要だという考えだ。
また、各店舗の負担を可能な限り減らすべく、楽天はこれまで継続してきた出店者へのサポート体制強化にも力を入れる。物流面では約10年間でおよそ2000億円の投資を行う考えだ。今回のイベントの前日には、自社の配送サービス「Rakuten EXPRESS」で、配送対象地域を秋田県、岩手県、山梨県、静岡県、岐阜県、三重県、滋賀県、愛媛県、山口県、佐賀県および長崎県に拡大したと発表した。これにより、同サービスの配送対象エリアは合計34都道府県となり、国内人口のカバー率は約61%となった。
そのほか、今回の送料無料化によって商品の価格設定を見直す店舗については、購買データなどを提供するなど、適正な価格設定についてのアドバイスも行う考えだ。
送料無料化は「三方よし」の施策となるか?
楽天は自社だけでなく、出店者、利用者の「三方よし」とするビジネスモデルの構築に力を注いできた。19年12月には不審ユーザーの取締りを強化。利用者の決済状況を監視し、高頻度のキャンセルや後払い決済の不履行などがある利用者には警告や購入停止・ID停止などを実施する。リスクのあるユーザーからの購入を防ぐことで、出店者を守るための施策だ。
今回の送料無料化は、利用者にとってメリットがあることは明らかだが、送料の負担を強いられる出店者に恩恵があるかは不明瞭だ。送料負担分を全て出店者が飲み込めば利益を圧迫するし、送料分を売価に反映させれば、売上の減少につながるからだ。その出店者が扱う商材の特性にもよるが、価格設定とマーチャンダイジングをよほど工夫しないと、各出店者へのインパクトは大きそうだ。
そうしたなか、作業服専門店のワークマン(群馬県/小濱英之社長)は、20年2月末で楽天市場から撤退することを発表している。このような動きがほかの出店者にも広まれば、楽天にとって大きな痛手となることは間違いない。楽天は出店者に対し、より確固たる理由を提示するか、自社で相応の送料負担を行うなどして確かな理解を得る必要があるだろう。