アパレル業界再編のトリガーは?A.T.カーニー福田稔氏が見通す
日本企業に必要な文化への投資
──マッシュホールディングス(東京都/近藤広幸社長)が22年12月に米投資ファンドに過半数株式を売却しましたが、ファンドが資金提供するような魅力あるブランドはまだ国内に眠っているのでしょうか。
福田 眠っています。たとえばフランスのLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(以下、LVMH)が次代に職人や技術を継承していくために設立した「LVMH メティエ ダール」という受け皿会社がありますが、昨年春にクロキ(岡山県/黒木立志社長)というデニムの生産会社と提携しました。世界のジーンズのほとんどが合成インディゴという染料で染めるのですが、岡山と広島の産地は天然の藍染めができるので、世界ですごく評価されていて、ラグジュアリーブランドが直接投資しているのです。そうした日本の産地をうまく活用したブランドはvisvim(ビズヴィム)やsuzusan(スズサン)などいくつかあります。
ブランド側は海外展開していくためのノウハウやリソース(資源)がないので、それをファンドに期待しています。ファンドが熱い視線を送っている国内のデザイナーブランドはどこも中小企業なので、それらを企業化していくことが一つの課題です。
フランスの場合はLVMHがコングロマリット(複合企業)化して、ブランドを買収して、世界のビジネスにしていくことを国策として進めていましたが、日本ではどこが担うかが課題です。
──日系も外資も関係なくファンドが主導しています。
福田 そうですね。国内は官民ファンドのクールジャパン機構(東京都/川﨑憲一社長)がそれを推進する位置づけになってはいます。LVMH系のファンドもすごく興味を示していて、アパレルではないが、エトヴォス(大阪府/尾川ひふみ社長)という日本のクリーンコスメや眼鏡店チェーンのOWNDAYS(オンデーズ:沖縄県/海山丈司社長)に投資をした実績があります。日本の消費財ブランドに注目している海外のブランドもあります。
私は日本のファンドか商社にその役割を担ってほしいと考えています。本来は日本の大手アパレルが手掛けるべきだと思っています。文化に投資するという視点を日本の企業は持つべきだと思います。