SPA企業を養分にする!勝ち組が次々移行する「ノン在庫マッチングビジネス」とは何か?
SPA万能論はいまも絶大に支持されている。当事者であるアパレル企業のみならず投資家もそうだ。アパレルに限らず広く投資対象を決める時、投資先を「SPAか否か」で判断することが多い。しかし、SPAは在庫リスクを抱えていることを理解していない。アパレル企業が破綻するのは、ほぼ例外なく過剰在庫が原因なのだ。そしてSPA企業は、新たな勝ち組ビジネスモデルの養分になってしまう。今日は、SPA企業が持つリスクと新たな勝ち組企業のビジネスモデルについて解説したい。
SPAだから強いのではない
SPAが危険な選択になるケースと理由
しかし、ユニクロやニトリなどはどうなのだ。あの業態はSPAではないか、という反論が聞こえてくるが、彼らが強いのはSPAだからでなく、扱っている商品レベルが価格に比べて非常に高い。要はコスパがよいことと、ファッショントレンドに左右されない無難なデザインを採用しているからだ。つまり、SPAだから強いのではなく、ブランドとして強い企業がSPAなのである。因果関係が逆なのだ。SPAで負けている企業は無数にある。ユニクロのブランドが今の世の中に合っていることは先週の論考で分析した。勝ち組企業は社会の鏡のように私たちを取り巻く環境と合致している。
SPAとは、「製造小売業」と訳されるが、元々の英語は“Speciality store retailer of Private label Apparel”。そのまま訳せば、「自主ブランドを持つアパレル専門店」という意味になる。それが、製造小売業と誤訳され、さらに「生産設備を持って自主ブランドを展開する企業がSPAだ」という具合に、本来の意味を矮小化してしまったのだ。「自前でPB(プライベートブランド)を持てばSPA」なら自前で商品をつくってしまえと商社に生産委託する。多くのアパレルには生産機能がないため、商社のOEM機能をつかって単なる委託を「ファブレスメーカ」という具合に拡大解釈し、自主ブランドをだしてSPAと自らを呼ぶわけだ。
この場合、ナショナルブランドを扱えば、原価率が高くなり利益がでないから自主ブランドのSPA業態にするという考えが根底にある。しかし、委託する商社は自前でコレクションを持ってアパレルに提案し、多くのアパレルはパターンもひけなければ自分で縫製仕様書も書かない。商社のつくったサンプルを若干修正して自主ブランド化しているに過ぎない。だから、生産機能がないアパレルでも簡単にSPAになることができるのだ。
しかし、こうしてできたSPAは、確かに原価率は非常に低くなるが「在庫リスク」を持つことになる。アパレル企業が破綻する最大の原因は「過剰在庫」だから、圧倒的競争力がないままSPA化をすれば余剰在庫で損失が拡大する。この在庫コントロールができなければSPAは極めて危険な選択になる。
河合拓のアパレル改造論2024 の新着記事
-
2024/07/16
ユニクロ式多頻度・小幅値下げとシーズン末大セール、どちらが得か -
2024/07/09
あなたの会社も要注意!「善意の行動」が仕組みを破壊するメカニズム -
2024/07/02
日本人が大好きな衣料品セール 安く買うのが難しくなる理由とは -
2024/06/25
「パリコレ」にアパレル業界人が行かなくなった理由 -
2024/06/19
インバウンドで最高益続出!日本人が知らない「百貨店の価値」とは -
2024/06/11
日本人の服がこの10年で「ペラペラ」になった本当の理由
この連載の一覧はこちら [29記事]
関連記事ランキング
- 2024-06-25「パリコレ」にアパレル業界人が行かなくなった理由
- 2024-06-11日本人の服がこの10年で「ペラペラ」になった本当の理由
- 2024-06-19インバウンドで最高益続出!日本人が知らない「百貨店の価値」とは
- 2024-07-02日本人が大好きな衣料品セール 安く買うのが難しくなる理由とは
- 2024-06-04定番はユニクロ、ファッション品はシーイン…どうなる日本のアパレル
- 2024-07-09あなたの会社も要注意!「善意の行動」が仕組みを破壊するメカニズム
- 2023-01-06SHEIN TOKYO「売らない店」現地レポート!担当者が明かす、低価格3つの理由とは
- 2024-07-12値下げ率大きいユニクロと値下げ率小さいしまむら どちらが高収益?
- 2024-06-24業態別 主要店舗月次実績=2024年5月度
- 2024-06-20店舗回帰で変貌!OMOが帰着する「ローカルロジスティクス」とは