競争市場でなぜ成長できたのか? 19年に新規上場した中華料理専門店・浜木綿の独自性

2020/01/08 05:55
    兵藤雄之
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      働きやすい職場をつくる、取り組みあれこれ

     今後の成長戦略としては、まず店舗の拡大だ。現状は東海地区(愛知、岐阜、三重)で全体の9割を占めるが、他の地域の15万人商圏への出店をめざしている。新規上場により得た資金で、セントラルキッチンを整備し、駅前、繁華街といった新たな立地に対応する新業態の開発にも着手する。

     ただ同社の場合、自前で調理師の育成を行っているため、人材の育成が進まない限り、新規出店は難しい。そこで飲食業界の先駆けとなる取り組みを多数展開している。

     男女共に働きやすい職場を目指す『ひなげしプロジェクト』は、その一例。制服の改良や軽い調理器具への変更を進めている。

     ある女性社員からは「中華鍋を振ることに憧れていたが、重たそうな鍋を振る自信がなかった。でも浜木綿では、軽いチタン製の鍋を導入しており、女性の私でも無理なく鍋を振って調理ができる」という声も上がっている。現在同社では1020代の女性コックを積極採用し、各店舗で活躍している。

     外食業界に対する共通のイメージとして「長期休暇や土日休みが取りにくい」ということがある。しかし浜木綿では「入社2年目からは年110連休の取得が可能」。“社員とその家族を大切にする”パイオニア企業として、本物の働きやすさを追求している。

     

     17年、外食業界からの上場は1社(東証マザーズ「一家ダイニングプロジェクト」(千葉県/武長太郎社長)、18年も同じく1社(東証マザーズ「ギフト」(東京都/田川翔社長))だった(再上場、市場変更を除く)。19年は2社に増えた。

     厚生労働省の人口動態統計によると、19年の出生数は、1899年の統計開始以来初の90万人割れ(864000人)となり、人口の自然減は過去最大の512000人となる見通しだ。国立社会保障・人口問題研究所が17年に出した推計では、21年の出生数を869000人になると見込んでおり、予想より2年早いペースで減少が進んでいる。人口減は、ダイレクトに胃袋マーケットの縮小につながる。外食業界にとっての冬の時代は深刻さを増すばかりだ。2020年、そうした厳しい外食環境から、果たして、IPO企業としてはばたくところは出てくるのか、新たなビジネスモデルの誕生を期待したい。

     

    企業概要
    社名 浜木綿
    本社 愛知県名古屋市昭和区山手通三丁目13番地の1

    代表者 林永芳社長
    設立 1968年

    資本金 6億5400万円
    売上高 52億2985万円(2019年7月期)

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