出雲に日光、名所に続々ショップをオープンする「ビームス」が目指す地方創生とは
ポップアップの「悔しい」思いから立ち上がった地域の常設店舗
しかし、成功の一方で「ポップアップであるがゆえに悔しい思いもした」と鈴木氏は回想する。
「数か月間の限られた期間では、本当に地元の事業者と一から関係を構築して商品開発などの企画をするには足りない。また、地元で採用した販売スタッフも経験を積み、商品知識を身につけたところで期間が終了してしまう。そこに後悔が残った」
その「悔しさ」が原動力となって新たに立ち上がったのが、名所景勝地に「ビームス ジャパン」の常設店舗を展開する地域共創型の出店プロジェクト「ビームス ジャパン ゲートストア プロジェクト」だ。
第一弾が、2022年12月にオープンした「ビームス ジャパン 出雲」。
ショップの場所は、神話の国・島根を象徴する出雲大社の表参道・神門通りに面した好立地で、「ビームス ジャパン」の活動を通じて知り合った出雲の伝統工芸品・出雲めのう細工を手がける「川島めのう」の社長から紹介してもらったという。
オープンに合わせて、「川島めのう」とビームス ジャパンがコラボしたオリジナルの勾玉キーホルダーを制作。そのほか、出雲大社ゆかりの「福こづち」や、出雲伝統の手すき和紙「出雲民芸紙」で作られた「堀江だるま店」の縁結びだるまなど、地元・出雲にゆかりの伝統工芸品とビームス ジャパンとのコラボアイテムが店頭に並んだ。
2023年4月には、第二弾として日光東照宮の表参道沿いに「ビームス ジャパン 日光」がオープン。ここでも、江戸時代の日光東照宮造営技術を受け継ぐ「五十嵐漆器店」の「日光彫」や、「きびがら工房」の鹿沼箒(ほうき)、地元日光で環境保全のために捕獲された鹿の革を有効活用する「日光MOMIJIKA」のポーチ類など、日光にゆかりのあるアイテムを取りそろえた。
この日光の店舗は、もともとビームスが地元・日光のアイスホッケーチーム「日光アイスバックス」のユニフォームデザインを20年以上手がけてきた縁から実現に至ったものだ。
「出雲も日光も、その地域の魅力を熟知し、PRに熱意を持っているキーパーソンが常設店の構想に興味を持ち、出店に向けて尽力してくれた。彼らの存在がなければ実現はしなかった」(鈴木氏)